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一羽のココロと理不尽なセカイ

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一羽のココロと理不尽なセカイ
                        みらい.N


































目次


  〜・運命・〜                           2

  〜・失踪事件・〜                        16

  〜・思索・〜                          32

  〜・たまにはお茶でも飲みながら他愛の無い会話をしましょう・〜  48

  〜・全面戦争・〜

  〜・欠落・〜

  〜・再び、そして失望・〜





















    プロローグ



現実とはまた別に、もう一つの世界がある。
 それを精神世界と呼ぶ。
 おとぎ話に出てくるような異世界のことを言う。
 例えば、そうだな、もしも君が寝ているときに夢を見て、その夢の中でまるで実体験の
 ような感覚に陥ったとしたらどうする?
 目が覚めたときにはもうそこは現実じゃないのかもしれない。
 
 俺はそんな絵空事のような話を身をもって体験した。
 これは、そんな俺の話。
 




















   運命

                 1

 目が覚めると、そこは自分がいつも通う学校の教室の光景が広がっていた。
 夜なのか、辺りは暗く窓からは月明かりが差し込んでいた。
 教卓の前まで歩くと、黒板の右端に書かれた日付が目に入る。
 28月63日飛行機曜日、日直シャープペンシルと消しゴム。
 訳のわからない数字や文字の羅列が並んでいた。
 気がつかなかったが、机とセットのはずのイスが教室から消えていた。
 誰かの悪戯なのか、そんな思いが渦巻いた俺は、そのまま教室を出た。
 廊下がどこまでも続いているような、そんな気がした。
 階段を降り、玄関を出ようとして、ドアの手すりに手をかけた時だった。
「扉が開かない?」
 きっと最後に学校を出た教員が鍵をかけたのだろうと、俺は職員室へと向った。
 すると途中でまだ残っていたのだろうか、一人の男子生徒と出会った。
「おっ?新しい部員か?」
 部員?何のことだろう、部活の勧誘ならもうとっくに終わっている時期だろうに。
「俺は高松龍司、まぁ1―Aの教室の部隊長といったところだ。身を守る物が無ければ
 この学校から外へは出るな。夢に喰われちまう」
「あの・・・何のことですか?部隊って一体・・・」
「ん?知らねぇのか?まさかお前、ここが精神世界だってことも知らないとか・・・」
 龍司という男はなんとも世知辛いような表情で俺を隅々まで見回した。
 きっとオカルト研か何かの部員募集の一つだろうと、俺は呆れ半分に龍司の右腰に視線
 をやると、妙な物がぶら下がっていることに気がついた。
「あの、それって・・・」
「ああ、M92Fっていって、1―Aのやつらなら誰でも持ってる拳銃さ」
 拳銃を軽々しく右手に取ると、龍司は愛想の無いような笑みをこぼして俺に渡してきた。
「お前何も持ってないだろう、これやるよ」
 背筋が凍るような感覚に陥った俺は、思わず龍司の右手を押しのけてしまった。
「やめてくれ、犯罪に関わるようなことはしたくない」
 そういい残すと、俺は龍司に目も向けずに職員室へと向った。
 これは警察に通報したほうがいいのか?校内で拳銃を持ち歩くような生徒を、放置する
 のは危険だと感じた俺は、職員室のドアを開き、電話のコキを手に取ると、すぐさま
 警察に連絡を取ろうとした。
 しかし一向に繋がる気配が無かった。
 まるでどこにも繋がらないような気がして、周りにあった電話全てを使ってみたが、
 どれもコールさえしなかった。
「よう、この世界で電話は使えないぜ」
 気がつくと、龍司は職員室の出入り口のドアに背もたれて俺を細い目で見ていた。
「何なんだよ、精神世界って何だ」
「一言で言えば、現実に見放されたもう一つの現実。戦争の世界だ」
「戦争だと?だからあんたはその、拳銃なんか腰に」
 俺は既に少しずつ龍司の言っている言葉を信用し始めていた。
「ちょっとこっちに来い」
 龍司に言われるがままついていくと、いつの間にか校庭を越え、校門の前まで来て
 いた。すると龍司はおもむろにグラウンドに落ちていた石ころを拾い上げると、彼は
 それを校門の外に投げ込んだ。いや、正確には投げ込んだはずだった。
 彼は大振りに右腕を振った。しかし石はまるで見えない壁のようなものにさえぎられたように再び弾かれ勢い良くグラウンドに戻った。
「どういうことだ?」
「見ての通り、この校門より先へは見えない壁によって進めないことになっている。いかなる衝撃をくわえてもびくともしない。だがこの壁は作戦5時間前には消える。もう解るだろう?この世界の存在意義を」
 俺の脳を、夢でも見ているかのような強烈な錯覚が襲った。
 呆然と立ちすくむ俺を横目に、龍司は話しを続ける。
「この世界では俺たちの敵である好餌社を叩きのめすことが目的だ」
「俺はそんな意味も無い子供のお遊びみたいな茶番劇に手を貸すほど暇じゃないんだ」
 とっさに放った俺の言葉を聞いた龍司は俺の胸倉を掴み、血相を変えた表情で答える。
「意味も無い茶番劇だと?俺たちがどれだけ必死に今まで戦ってきたのかも知らないで
 よくそんなことが言えるな」
「そんなこと知るか!俺はここから出たいんだ。」
 龍司の絡みつく手を振りほどき、俺はそのまま、出ることの許されない校舎の中を
 駆け続けた。頭の中がパニックになってしまったのか、自分が今どこを走っているの
 かさえも解らなくなるほど心に焦りを感じていた。もしかしたら、俺はこのまま死ぬ
 までこの世界に閉じ込められたままなのか、そんな不安を胸に苛立ちのような感情も
 こみ上げてきて、廊下の壁を殴った右手の拳は赤みがかかり、痛みすら忘れる
 ほどだった。
 気がつけば俺は保健室の前に脱力しきった肩と足で立っていた。
「ここなら少し休めるか」
 横開式のドアをスライドさせると、少ない医療用具と3つばかりのベッドが部屋の左奥
 に置かれていた。気がかりだったのは、一番奥の3番目のベッドだけ仕切りのカーテン
 で隠れていて、妙に人の気配がすることだった。
 しかしそんなことよりも俺は現実逃避をしたかったのか、空いてたベッドの一つに
 上半身から全体重を放り込んだ。
 目をつむってしばらくしてからだった。隣のカーテンで閉め切っていたベッドの方から
 ゴソゴソと何かが動く音がした。
 俺は思わず声を出す。
「あの、誰かいるんですか」
 返事は無かった。
 妙な不安感を抱いた俺は、カーテンの端を掴みそっと開いた。
 するとそこにはしっかりと布団で包まれ、すやすやと寝息をたてて眠る同い年ぐらいの
 女子の姿があった。すぐそばのランプ付きのテーブルには眼鏡が置かれていた。
「う・・ん?誰?」
 ぼんやりとした寝起き眼が俺を見つめてきた。
「あ、すいません、寝ていたの知らなくて」
 すると彼女は上半身を起こして、眼鏡をかけると以前重たいまぶたのまま。
「新しい入隊志願者かしら」