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漢字一文字の旅  二巻  第一章より

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八の四  【疑】



【疑】、左部は杖を立てた人が後ろ向きで、進むか退くか決めかねて立ち止まってる姿だとか。
それに右部の後ろ向きの人の形をさらに添えている。
ここから「うたがう」、「まどう」の意味になったとか。

そんな【疑】、「疑問」、「疑惑」、「容疑」などの熟語を作る。
また四字熟語には「疑心暗鬼」がある。

これは仏教の「六根本煩悩」の一つとされ、仏教の真理に疑いを持つことだ。
日常では、暗闇の中に、いない鬼がいるように疑うこと。
したがって「疑心暗鬼」は晴れることが前提になるのかも知れない。
一方「疑惑」の結末は晴れることもあるし、やっぱりそうなのかともなる。

この【疑】、英語では「doubt」と「suspect」がある。
どちらも「疑う」だ。
しかし、微妙に意味合いが違う。

「doubt」は、ちょっと違うと思うけど、疑う。
「suspect」は、きっとそうだろうと疑う。
とのことだ。
「suspect」の【疑】の方が濃い。

紀元前六〇年、古代ローマのシーザーも疑った。
相手は不幸にも妻だった。
男性禁制の儀式の時、妻は女装した情夫を引き込んだと。

シーザーはこれに戸惑い、「シーザーの妻は世の疑惑を招く行為をしてはならない」と立派な言葉を発した。
この英語が…「Caesar's wife must be above suspicion.」

そう、ここに……なんと「suspicion」と言ってしまった。
シーザーは絶対にそうだと確信の…、そう、強気の【疑】があったのだろう。
そして結末は……離婚だった。

事ほど左様に、【疑】という漢字、どうも薄いものから濃いものまであるようだ。