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Secret Operations

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ACT3『到着』


 ――――私は、『ススキヶ原T-ウィルス散布及びB.C.W.戦闘データ算出実験』の極秘工作員としてススキヶ原に向かっている。詳しい作戦内容は知らない。のび太君達に接触する予定の、『金田正宗』から詳しい作戦内容を聞くらしいけど、随分とまどろっこしい事をするわね。まぁ、参加出来ただけ、幸運か。
そう思っていると、前方にいるヘリコプターのパイロットが口を開いた。
「そろそろ芒野山の都市側の反対側の麓に着くぞ」
 そのパイロットが言った、『芒野山』とは、のび太君達が裏山と呼んでいる場所の事だった。その『芒野山』の都市側とは反対側の麓から歩きで、小学校に向かう予定だ。

そう思っていると、ヘリコプターがホバリングし、キャビンのハッチが開かれた。そして、そこから梯子を下ろし、地上に降りた。
無事に地上に降りると、ヘリコプターは、ナムオアダフモ機関の方へと飛び去っていった。私は、『グラッチ』の装弾を確認し、『芒野山』の頂上に向かって登って行った。周囲を充分に警戒しながら登っていく。そこには、気の利いた道なんて物は無く、土と岩が不規則に並んでいるだけだった。木々の木の葉に遮られているので幾らかはましだが、頭上からは、熱い日差しと紫外線が降り注ぎ、蝉の鳴き声が五月蝿いくらいだった。その様子だけを見れば、都会に存在する貴重な自然だろう。だが、都市の方では既に、自然の摂理は通用しない。死者が生者の生き血と生肉を求めて徘徊し、その被害者は、動く死者となるか、動かぬ肉塊のどちらかにしかならない。恐らく、此処までは『T-ウィルス』の脅威はまだ行き届いていないんだろう。しかしそれも、後、数分で破られるだろう。
 ――――どうにもね、遣る瀬無いわ。
そう思っても仕方が無いんだけれど。……なんにせよ、今私がやる仕事は一つね。この裏山に存在する旅館『裏里』に待機している金田正宗とコンタクトを取る。取り敢えずはそれだけに集中すればいいわ。
そう思った後は、余計な事を考えずに進んで行った。頂上に着いた後は、来た道と反対側を下山していく。そして、ナムオアダフモ機関で渡されたGPSを頼りにし、裏里に向かう。

やがて、それ程時間も掛からずに旅館らしき建物に着いた。近くの看板を見てみると、『裏里』と書かれていた。『裏里』と呼ばれる旅館は、壁に傷や汚れが目立ち、いかにも不潔な印象を受ける。この旅館は経営をしていなかったんだろう。私は、ゆっくりと、扉を開けた。中は、外よりも酷かった。床は所々抜け落ち、黒ずみやカビが至る所に見受けられる。私は、こんな所に長居はしたくないと思いながら、受付員室の中に入って行った。そこには金田正宗がいた。
「…第三特殊部隊隊員の『レナータ・ロマノヴナ・ウヴァチャナ』だな」
 金田正宗は、表情を全く変えずにそう言った。『レナータ・ロマノヴナ・ウヴァチャナ』とは、私の本名だ。いつも、ナーシャと呼ばれているので、たまに自分でも本名がわからなくなる時がある。
「はい、『レナータ・ロマノヴナ・ウヴァチャナ』。ただいま到着しました」
 私がそう言うと、金田はあるテーブルむかって歩いていった。そのテーブルの上には、バインダーに留められた幾つかの資料があった。恐らく、作戦資料だろう。金田は、そのバインダーを手に取ると、私にそれを渡しながら話し掛けた。
「これが今回の作戦資料だ。目を通しておけ」
 金田はそう言うと、バインダーから手を放した。私はそれを受け取り、資料を見た。その資料の一枚目の表には『ススキヶ原T-ウィルス散布及びB.C.W.戦闘データ算出実験』と書かれていた。それから私は、その資料の紙を一枚ずつめくり、中身を見た。










その資料の中に書かれていたのは『ススキヶ原T-ウィルス散布及びB.C.W.戦闘データ算出実験』での私が担当する工作活動だった。
まず、出木杉が地下研究所までのルートを確保した後、出木杉と共に研究所のN.A.C.B.C.W.のデータの奪取。そして、証拠の抹消。
これが、今回の私の仕事だ。
「でも、これが私の任務だとすると、動くまでかなり時間が余っているんじゃない?」
 私がそう尋ねると、金田は言う。
「ああ、その通りだ。今、学校には一般市民や警察がいる。B.C.W.の騒動で、殆どの人間がやがて死ぬだろう。そうならなければ、作戦の遂行に支障が出る。残念ながら、今のところは、学校に多くの人間がいる。このままでは、作戦を遂行できないだろう」
 金田がそう言うと、私は、
「……何かやるつもりね」
 と言った。すると、金田は、私がそう言うのを解っていたかの様に言う。
「察しがいいな。このまま警官共が生き残ったら、パーフェクションB.C.W.を投入する。個体でも高い戦闘能力を有する高水準の生物兵器だ。生半可な腕では生き残れないだろう」
 金田はそう言うと、更に続けて言う。
「まぁ、2〜3人位は生き残った方が面白い気もするがな」
 金田はそう言い残すと、受付員室の扉から出て行った。私は誰も居なくなった受付員室のソファーに座り、銃の手入れをした。手入れといっても、専用の器具なんかは無いから、軽く動作確認をするだけで終わった。
暫くはやることが無い。そう思うと、途端に眠気が襲ってきた。…そういえば、ここ数日は寝てなかった。いろいろ仕事で多忙だったからね。
 ―――――――――――ナムオアダフモ機関での仕事は久し振りだ。私の本業はそう、別の機関での諜報活動だ。その機関とは、国際的な法執行機関だ。つまり、私はナムオアダフモ機関に潜入調査している事になる。そして、出木杉君も私と同じ潜入調査員だ。今回は、ナムオアダフモ機関に非人道兵器の不正利用の疑惑がかかり、潜入調査をしているという事だ。…………………………任務まではまだ時間がある。少し一眠りするか。
 すると私はソファーに横になり、仮眠を取った。











 ……………………どれくらい経っただろうか? 時計を見ると、10時40分を指していた。仮眠を取り始めた時刻が8時40分頃だったから、2時間寝ていた事になるわね。――――――少し寝すぎたわ。
 ……そう思っていると、周囲の異変に気が付いた。
 …………妙に外が騒がしいわね。金田の奴が何かやったのかしら?
そう思って、受付員室からでて周囲を見回した。玄関の近くには数体のゾンビがいるだけだったが、旅館の外からは、犬の咆哮らしき声が聞こえた。私はゾンビを無視して通り抜け、旅館から出た。旅館から出た瞬間に、犬のゾンビに遭遇した。
「GRURURURURURURURURU!!」
 犬のゾンビは私を見ると、躊躇いもなく飛び掛かってきた。私は、『グラッチ』を構え、向かってくる犬に発砲した。弾丸は頭部に命中し、その犬のゾンビは動かなくなった。まだ動物の遠吠えが聞こえるところをみると、まだ何体かの犬のゾンビがいるのだろう。私は『グラッチ』をホルスターに仕舞うと、裏山を駆け下りた。途中、犬のゾンビが追いかけて来たが、裏山と学校を繋ぐ格子戸を閉めると、犬のゾンビは追ってこれなくなった。
作品名:Secret Operations 作家名:MONDOERA