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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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白いライラックの花

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さくらが葉桜に変わり、庭から甘い香りが漂って来ていた。穏やかな日である。
調度私はモクレンの花を見るために庭に出ていた。
その香りは白い花をつけたライラックからであった。小さな花弁がかたまる様に咲いている。
その花は若葉のみどりに引き立たせられて、白さが真夏の雲のように白い。
青空のなかに見えるとそんな気持ちがした。
ライラックの隣にはカイドウの花も咲いている。この花の色は深紅である。
見る角度によっては、角隠しをした花嫁が紅をさしたようにも感じる。
仕事に追われる中で久しぶりの休日であった。
何が楽しくて毎日を過ごしているのかと思う事がある。そんな思いも翌日になれば忙しさで忘れてしまう。
食事をし、仕事をして、趣味を楽しむ。
このところその楽しみの庭いじりさえもできない。
生き物優先である。愛犬の茶々の散歩。アヒルの世話。アヒルは朝の5時には騒ぎ出す。
餌を与え、プールの水を変えてやる。
かれこれ1年も経つと、アヒルも覚えてくれたのかもしれない、よちよちと歩いて近づいてくる。
時にはミクロンの誤差も許されない仕事の中で、こんな呑気な時は貴重に思える。
わたしは絵画も好きで、絵を見ていると、花を見る時のようにうきうきする。
同じ絵であるのにその日で感じ方も違う。
最近気に入った作品を目にした。
ライラックの花のように清楚な作品である。絵からは香りはしないだろうが、作者の香りが漂う気がする。

作品名:白いライラックの花 作家名:吉葉ひろし