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【神風(かみかぜ)スピカと土屋倉統(つちくら・おさむ)】





 学校へ徒歩で余裕を持って行ける距離で、元は由緒正しい人達のお屋敷だったと囁かれるその一軒家。
 つくりは歴史の重みを感じさせる風格があり、当然のように広いです。もっとも、二人暮らしなのですから部屋など三つほどあれば事足るのですが、自分達が気に入ったのは広い狭いの云々ではなく、レトロな雰囲気の内装と広い庭でした。
 従姉の中等部卒業とほぼ同時に引っ越しましたので、整備した庭はまだまだ不完全なものです。しかし学校の園芸部で頂いた花なども植えていますから、来年には満足のいく出来栄えになることでしょう。
 実家から持ってきた、日毎順調に育っていくお気に入りの花達を満足げに見ていた統(おさむ)少年。風に運ばれてきた紅茶の匂いにと顔をあげました。するとちょうどこちらを向いていた従姉と目が合います。
 今日のお茶当番はスピカでした。一階のテラスに出されたテーブルの上にはテーブルクロスが掛かり、すでにココア味のクッキーと蜂蜜の匂いが漂うパウンドケーキ(スライス済み)が用意されています。
 園芸用の軍手をとり、手を洗って戻ってくると、紅茶をカップに注いでいるところでした。

「今日はダージリンですか?」
「ええ。ファーストフラッシュ」

 春摘みの葉は香りが強く、ダージリンのマスカットフレーバーがよく分かります。
 一口飲んで、そういえば――統が言い出しました。

「また言われたんですよ」
「……やっぱりねえ」

 ふう、などと、穏やかな午後のおやつの時間には似合わないため息がふたつ。
 ――確かに学生の二人には、この家はいささか不釣合いなことでしょう。
 庭付きの家が欲しかった二人。しかし色んな実情を鑑みると、アパートメントでも仕方ないと思っていたところへ転がり込んできただ『ワケあり』格安物件。
 怪奇現象が起こると評判で、最近では全く買い手がつかなくなり、業者からすれば目の上のたんこぶ状態な『幽霊屋敷』でした。
 そして、それは動かぬ事実だったのです。もちろん二人が入居したお試し期間は、まさに噂どおりの有様でした。

 笑う声や、すすり泣きがする。
 触っても居ないのに物が動く。
 人間にしてはかなり軽い足音がする。
 閉めていたはずの窓が開いている。
 窓の外で謎の物体が飛来する。
 風が吹いていないのにカーテンが捲くれあがる。
 写真を撮ると必ず無いもの――何がとは言いませんが――が写る。
 ラジオやテレビつけると、慢性的な砂嵐や奇怪な声が混じる……。

 ――常人であれば、夜逃げしてでも出て行きたくなるような環境が提供されたのです。

「別に害はないのに……」
「全くだよ。寧ろとても助かっているし」

 もう一度申し上げますが、“常人”ならば耐えられないことでしょう。しかし幼い頃から『見える』立場にいた人間は常人の部類に入りなどしないのです。
 幸か不幸か、オカルト方面への免疫が異常に強かった二人。これしきのことで怖じ気つくわけがない彼らは、今ではすっかり慣れてしまっていました。
 それは怪奇現象の主も同様だったらしく、姿を見せることは未だにないのですが、新参者(じぶんたち)を受け入れることにしたようでした。

「急に雨が降ってきたらに洗濯物をとりこんでくれるし」
「寝坊するとちゃんと起こしてくれますし」
「探していた物がいつの間にか出されていたこともあったね」
「二人揃って遅くなってしまった時に家に灯りがついていると、安心しますよね」
「本当だよ」

 二人は同じタイミングに笑い合いました。
 テーブルの上で、二人の真ん中に置かれていたカップの湯気が、風も無く揺れました。

 ――そんな、従姉弟達と幽霊(だれかさん)の、温かくも奇妙な共同生活。
作品名:リア充生活なう! 作家名:狂言巡