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てっしゅう
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「哀の川」 第三十一話

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純一は学園生活をそれなりに楽しんでいた。ESSに入っていた関係で、大学では海外旅行の同好会に入部した。世界各地の有名な場所に行ったり、世界遺産を訪ねたり、日本の名所を紹介するガイドを発行したりすることもボランティアとしてやっていた。部員は10名、男女半々で新入生は純一だけだった。その意味でも大切に扱われている感じがしていたが、実は先輩の女子にその容姿を気に入られていたのであった。東京から来ていること、外車に乗っていること、両親が商売人でお金持ちだと言うこと、神戸大学へ入れるほど頭が良いと言う事。その一つでも凄いことなのに、さらに全部備えていたから、年下なのに憧れてしまう存在になろうとしていた。

「斉藤君は、彼女いてるの?」いつも会った女性に必ず聞かれる。その度に、婚約していますよ!と返事すると、「エエッ!うそやん~」と言い返される。それでも、先輩達は何かと誘いの手を差し伸べてくる。お茶はもちろん、食事、映画、温泉、ライブ、ドライブなど毎日のようにだ。純一ははっきりと言えば、気乗りする可愛い子がいないこともあって、簡単に断ってきた。複数でなら、誰ともどこへでも出かけたから、彼女一筋なんだと良いふうに理解されていた。

由佳から夜家に電話がかかってきて、母親とジャズダンスのスクールへ通うことになったと話してくれた。仲良くやっていてくれて嬉しいし、安心も出来た。離れているとどんなに信じあっていても、ふと不安がよぎるものだ。その点で、母親が見張り番のような役目をしているとちょっぴり皮肉に感じた。自分もふらつかないようにしようと、電話の後で思った。受話器を置いたらまたすぐに電話がかかってきた。