小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

さ・く・ら

INDEX|1ページ/6ページ|

次のページ
 

さいかい



電話であれほど盛り上がって、オレの住まいから近く桜の名所でもある○○公園の桜の花が咲いたら一緒に見に行こうねと言っていたのに、桜が見頃になった今になって、ヒロコは“ひとつ予定が未定になっている約束があって、明日きまるの。そっちがダメだったら行くね”とメールが来た。

ちっぽけだけどオレにもあるプライドをツンと突かれた思いだった。ヒロコの交際範囲が広いのは聞いていた。そして、その未定だという予定も何かのグループの付き合いらしいのだけど、十年以上もの長い間を置いているが、電話でのやりとりだけで、もうオレの頭の中にはすっかりヒロコが住み着いている。

“補欠はイヤダ”と、子供のようなメールを返した自分を情けないと思ったが、色々な事情があってお互いにフリーだということを知った今、逢いたい思いは強い。
昔、ヒロコが好きだけど結婚までは考えたことが無かったオレ。まだどこか子供っぽかっただろうオレに見切りをつけて、二十歳をちょっと過ぎた頃にさっさと結婚してしまったヒロコ。

ヒロコからの返事はないまま、週末が来た。嫌われてしまったのだろうか。それでも自分の気持ちは伝えたのだから仕方が無い。この空しさを何をして過ごそうかと、思いを巡らせていると、メールが入った。

“もう家をでたよ。○○公園は、△△駅からどうやってゆくの?”

ヒロコだった。朝まで迷って結局オレに逢おうと決断したのだろうか。唐突に、もう家を出て向かっているという、ヒロコらしい行動に、オレは嬉しくなってすぐに“駅からバスが出てる。じゃあ、△△駅で待ってるよ”と返信した。

久しぶりに会ったヒロコは、まるで毎週逢ってでもいたように屈託なく話をし、笑った。空白の十数年なんて無かったかのように。バスに乗るひとの行列が凄いのを見て、「○○公園って遠いの?歩いていける?」と訊いてきた。
「うーん、20分くらいかなぁ」と答えると、「じゃあ歩いて行こう」と、ヒロコはもう歩き始めている。オレはこんなところも好きだなあと思った。

作品名:さ・く・ら 作家名:伊達梁川