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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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危険な双子にご用心


 いつの間にか空は淡い黄緑色に染まっていた。緑色は目に優しいというけど、見慣れると茜色の夕焼けよりも落ち着いて目に映る。意外といいものだと、初めてこの世界に肯定的な意見を抱く。
 打海(うつみ)から説明を受けた俺はしかし、どうにも何かが引っ掛かっていた。「今日はここで野宿ですかー?」と能天気にほざいている彼に生返事をし、少し考え込む。少々長すぎる時間をかけて、その正体にやっと気付いた。
 こいつ、俺と出会う前の情報を何処で仕入れたんだ?
 亀まがいとグリフォンを従えた、と言う情報は、服部(はっとり)も持っていたから不思議はない。空から降ってきた、というのも、まぁ目に入っていたとしてもおかしくない。でも、戦争反対発言とか、見返りなしで戦闘に突っ込んでいったとか、そういうのは情報として流れるものなのか?
 少なくとも、昨夜別れて昼に助けてもらうまでの間に、羊元のところから赤の城まで引き返すのは難しい。俺は確かに迷ったけど、慣れた奴だからといって、あんなに小さく見えた屋根のところにたどり着くのに半日かけないなんて絶対に無理だ。
 つまり、昨晩会った時点で、彼はそれらの情報を持っていたことになる。
 もともと食えないやつだとは思っていたけど、ここまでくると流石に警戒心が生まれる。恩を仇で返すなと言うけれど、助けてもらったからと言って油断はできない。提供だか何だか知らないけど、そこまで情報を持っているんだ。俺がこの世界のルールに疎いことも筒抜けだろう。いくらでも間違った情報を刷り込める。