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てっしゅう
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「哀の川」 第二十八話

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夫は仕事優先の毎日だった。遊びに出かけることも無く、買い物に行くことも無く、環は時折母とデパートへ出かけるぐらいが楽しみになっていた。そして、妊娠したことが確実になったことで純一の子供を生める喜びだけが生きがいになっていた。自分の不注意で事故さえ起こらなければ、運命は違っていたのであろうが・・・

純一の携帯に電話がかかってきた。日曜日のことである。ちょうど由佳と逢っていた時間にだ。

「先生!どうしました?先生?」声がかすれて聞こえなかったのだ。もう一度尋ねた。
「先生!純一です。どうしました?」
かすかな声で環は純一に言った。
「じゅ・ん・い・ち・ あ・な・た・が・す・き・だ・っ・た、さ・よ・う・な・ら」

純一あなたが好きだった。さようなら・・・とそう聞こえた。

「先生!何がさようならなんですか!先生!先生!・・・」
反応は無かった。やがて、相手の携帯が途切れて、ツーツー、と言い出した。純一はものすごい不安に駆られて、由佳にこのことを話した。学校へ電話をかけ、山本先生の実家の電話番号を教えてもらい、かけ直した。