小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

あみのドミノ

INDEX|36ページ/55ページ|

次のページ前のページ
 


ほぼ一週間ぶりに亜美乃から電話があって、私はいそいそと待ち合わせ場所に急ぐ。娘の真奈美がどこかで見張っているような気がして、待ち合わせは新宿ではなく池袋にした。ただ会えるだけでもいい。亜美乃の笑顔と心くすぐる少しハスキーな声を聞くだけでいい。私は亜美乃に魔法をかけられているのかもしれない。亜美乃が魔法をかけている姿を思い浮かべてニヤニヤする。通り過ぎる人が気持ち悪いものでも見る目つきで通り過ぎた。

外に出ると夕日があたっている並木の緑が目についた。排気ガスでいためつけられているのだろうが、雨に洗われて綺麗になったようだ。人々を通り越して緑に目が行くなんて、やっぱり恋なのだろうか?と自分に聞く。頭のどこかでのぼせるのもいい加減にしろよとささやいている。

横断歩道を渡りきった所にある洋菓子屋の前で私は腕時計を見る。少し早く着いた。亜美乃の姿は無い。私は駅から吐き出されてくる大勢の人達を眺めた。亜美乃の姿を探しているつもりでも胸の谷間の見えそうな女性や、ミニスカートの太もものあたりに目が行って、自分で自分の頭を叩きたい気分だ。これが中年かと思う。

亜美乃の姿が目にとまった。私はゆっくりと横断歩道を渡ってくる姿を見ている。少し長めの裾丈のスカートが歩くたびに翻って舞踊のようだ。背筋がピンと張って小さな体を大きく見せている。もう私を見つけたのだろうか。視線は真っ直ぐに私の方を向いている。

化粧もしているようだ。小走りによってきたら私もかけよって抱き合うか。と少女マンガのような思いが頭をよぎる。しかし亜美乃はゆっくり近づいてくる。私のとる態度は少し目を細めながら軽く微笑むことだろう。最初に会ったときとはずいぶん違って大人の女という雰囲気になった。

「他の女の人をニヤついてみていたでしょう」
亜美乃の第一声は私が思ってもいないことだった。私は「亜美乃を探していただけだよ」と言ったが、すでに言い訳の顔だったのだろう。
「私、目がいいんだから。まあ、いいわそのあとすぐ私を見つけたから許してあげる」


作品名:あみのドミノ 作家名:伊達梁川