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あみのドミノ

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私が「もう五十代だしなあ、娘より年下かあ。せいぜいお父さんか」と言うと、
「あ、それいいかも」と麻美が表情を明るくし、そのあとにふざけた調子で「ねえ、お父さん、何か買って」と言ったのは、少しだけのんだワインのせいかもしれない。
「麻美!」亜美乃が少し強い口調で言った。麻美もその言葉ではっとしたような顔になり、バツの悪そうな顔をして亜美乃を見た。
「何も買ってあげられないけど、お父さんになってあげる」
私もまたワインに酔ったか、つい口走ってしまった。ついさっき、二人が母娘だけで生活してきたことを知ったばかりだった。「困ったことや相談事があったら電話しなさい」と二人に名刺を配ろうとして、麻美が自分の会社の社員であることに気づいて亜美乃にだけ名刺を渡した。私は喉の渇きを覚えワイングラスを口に運んだが、ほんの少し残っていたワインが唇を濡らしただけだった。それを合図のように姉妹が帰り支度を始めたので、もう少し飲みたい気持ちを抑え、「さあ、でようか娘たち」と言った。

外に出ると、風が少しあり、頬に心地よかった。姉妹二人も酔っているのか、私の両側の腕にぶら下がるようにつかまっている。少しだけ匂いが違うのもおかしいし、それを感じる自分がすごい贅沢をしているような気がした。私は思いがけぬ嬉しさを感じながら、はてこれは娘に申し訳ないのか、妻に申し訳ないのかなど感じながら駅に向かったのだった。

作品名:あみのドミノ 作家名:伊達梁川