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永山あゆむ
永山あゆむ
novelistID. 33809
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ヘリテイジ・セイヴァーズ-未来から来た先導者-(後半)

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 壁に移された映像が終わる。
「―これが、五〇年後の宮島だ」
 乙姫は、左腕にインスペクトを装着する。
「政府の強硬な手段によって固められた計画―『未来技術推進計画』にのっとり、宮島を『未来科学開発研究基地』にした結果、このような悲惨な状態になったのだ。もちろん、政府は何も動こうともしない。私たち宮島の民を捨て駒にしやがったんだ・・・・・・!」
「捨て駒・・・・・・」
 自分の故郷を捨て駒にした恨みが、彼女からふつふつと湧き上がってきているのが光大には分かった。『夢』を追いかけた大人たちの末路が、『道具扱い』として終わらせてしまう憎悪。光大は乙姫の気持ちが分からなくはなかった。
 自分も『夢』ばかり語る大人たちの戯言、『夢』がないものは見捨てられる、と思わせぶりな発言を何度も聞いてきたから。あんだけ言っといて、結局は良いように使われ、捨てられる―そんな『夢』が中心で、矛盾ばかりが溢れていることが何よりも悲しくて、憎かったのだ。 『夢』に向かって輝いている幼馴染み―花楓と葦貴があまりにも惨めになってしまうではないか。
「ヒドイ」
 この苛立つ気持ちを三文字の言葉に集約する光大。
乙姫は、ため息交じりに、
「ああ、全くだ。大人たちは私たちを良いように使い、良いように捨てる。私利私欲のためだけに。まるで、チェスの騎馬のように、な・・・・・・」
 ハァ~、と息が漏れる。
 光大は胸に込みあがる熱い想いを抑え込むように、
「・・・・・・なあ。確認するけど、本当に五〇年後の世界なんだよな!?」
「無論だ」
 乙姫は、何度も言っているだろう、と思わせる口調で答える。やっぱり本当なんだ、と光大は確信する。
「と、いうことはこの先・・・・・・」
 乙姫は頷きながら、
「あの映像のように、自然は何もかもなくなり、ポルターガイストだらけになる。無論、この時点で既に異変は起きはじめているけどな」
「乙姫の目的は、そいつらを始末するってことか」
「そうだ。それと同時になぜポルターガイストという異霊どもが出現したのも気になる。それの調査も含めて、私はここに来たのだが―」
 すると、突然―
 ピポ、ピポ、ピンポーン!
 玄関から、急いで出てくれ! と言わんばかりのインターホンが鳴り響く。
「だっ、誰だよ!?・・・・・・ごめん、ちょっと待ってな」
 乙姫に一言告げ、狭い家の中を走って、玄関を開ける。
「こ、コウ!」
 そこにいたのは、葦貴だった。
「よっしー!? どうしたんだよ、一体」
「だ、団地が・・・・・・おれと花楓の住んでいる団地が・・・・・・火事が、火事が発生したんだ!」
「なんだって!?」
 突然の出来事に光大は驚く。
 普段、火事だとか、泥棒沙汰だとか―事件は起こらないので、珍しいのだ。
「それで、どんな状況なんだ」
「そ、それが・・・・・・とても不思議なことに・・・・・・」
「不思議なこと!? それは何だ!?」
「お、乙姫!?」
「わぁっ!」
 見も知らない女性―奥から突然、乙姫が出てきたことに、葦貴はこんな時でも思わず、ドキッ! とする。
「いいから、教えろ!」
 乙姫は葦貴の両肩を強くもって揺さぶる。
「わああっ! 分かった、分かったから~」
「とりあえず乙姫、落ちつけ!」
 光大は乙姫を落ちつかせ、二人の間に割って入る。まずは落ち着いて状況を理解することが大切だ。これじゃあ、話が進まない。
「あ、ああ。分かった。すまない」
「ふう~」
 理解した乙姫は、葦貴の方から離れる。これで話が進む。
「で、不思議なことって、一体なんなんだ」
 光大は冷静に葦貴を訊ねる。
「あ、ああ。何もない空から突然、火の粉が落ちてきたんだ。すると、団地の様々な家に燃え移って・・・・・・」
「!」
 いても立ってもいられなくなった乙姫はすぐさま外へと飛び出していく!
「ちょ、乙姫!」
 彼女は目も眩むほどの猛スピードで家を後にした。
「もう~、少しは落ち着けよ」
 髪をくしゃくしゃにしながら、落ち着きのない彼女の行動に呆れる光大。面倒くさいと思いながらも、彼女のことが気になる光大は、
「しょうがねぇ! 俺たちも行こう! っちょっと待ってろ!」
 光大は急いで支度をする。もし、彼女の言ってるポルターガイストの仕業だったら、一人では危険だ。
 あいつ一人では任せておけない! そう感じた光大は、剣道で使う竹刀を背負う。
「よし、あとは・・・・・・」
 いつもお守りとしている、祖父の形見―白い球体が浮き出ている、リストバンドのようなものを左腕に身につける。光大はいつも、外出するときにはこれをお守り代わりとしているのだ。
(そういえば、これ、乙姫のものと似ているような)
 確かに、見た目がやや違っても、乙姫がつけていたもの―インスペクトに似ているのだ。まさかと思うが・・・・・・。
 ―今はそんな詮索は無用だ、早くしないと!
 光大は急いで、玄関の外で待っている葦貴のもとへと向かった。