犯人発見しました!
「こう、小さな銀製のボタンなんだけど。片方にテントウムシが彫り込んであるやつねで、そこに無かった?」
「……あったような、無かったような……あー、これは?」
「それは六ペンス銀貨だよ。参ったね、どこにやったのかしら」
どうして友人がせかせかとクリスマスディナーの準備をしているのかは、さっきまで乙女にとって大きな謎であったのだけれど、今しがた、その謎はほとんど解けてしまったところだ。
まだ師走にも入っていないのに、友人のアンナはプディングを作りはじめていた。
今年のクリスマスだって生徒会会長の家に行くし、料理は皆で分担して作っている。つまりこの料理は、そのパーティーで自分たちに振る舞われるためのものではないのだ。
では誰が食べるのか? まさか彼女と二人で食べるというのか? この量を?
……香りをかいだだけで、満腹になってしまいそうなボリュームだ。
「クリスマスプディングにチャームが入ってないなんて、笑えないよ。どうしようか」
もちろん自分たち二人で食べっこないのだ。
ちなみにチャームというのはプディングの中に沈めておいて、切り分けて食べたとき、誰の切れにどのチャームが入っていたかで、次の年の運命を占うためのものだ。だから大勢で食べるのを目的にしているはずだ。
ならば彼女は誰のためにプディングやパイ、ビスケットを用意しているのか。
もちろん乙女はすでに察している。なぜならグラスの隙間から現れた小さな両手が、ボタンをこっそり隠すのを見ていたから。
アンナに気づかれないようにそっとため息をついて、グラスの淵をコツンと指ではじいてから、囁く。
(あんまりからかわないであげて)
――あの子はあなたたち小さな同居人のために、プディングを作ってくれているのだから。
「さっきそこに置いたのに」
そうぼやいてアンナが顔を上げるのとほぼ同時。ボタンは不思議な風に乗って、ポトンとテーブルの上に落ちた。
一瞬目を丸くした姉御肌の友人は、しかしすぐに苦笑して部屋の中を見回した。
そしてこう呟いた。
――Happy Happy Christmas!