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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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ぼくとフーボの日々

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「なんだ。こりゃ?」
 ぼくの足のレントゲン写真を見て、お医者さんはいすからずり落ちそうになるほどビックリした。
「うっそー」
 そばにいた看護師さんも奇声を発している。
 お医者さんはつばをのんで呼吸を整えると、ぼくと付き添っているお母さんに向かって、うわずった声で言った。
「ここをごらん下さい。ここに……」
 ぼくもお母さんも目をこらしてレントゲン写真を見た。
 お医者さんの示した先にはひざの骨のまわりにぼこぼこと何かが着いている。

「フジツボが生えています」

 ががーーん!
 こんなことって。
 たしか都市伝説にあったっけ。
 足にフジツボが生えるって話。

 まさか、まさか、まさか! 
 ほんとうにこんなことがあるなんて。
 お母さんは絶句して口をぱくぱくさせている。両手をほおに当てて青ざめた顔は、あの有名な『ムンクの叫び』にそっくりだ。
 もちろん、ぼくだって同じような顔をしているだろう。心臓が口から飛び出しそうなほどのショックだもの。

 たしかにこの夏、海に遊びに行って岩場で転んでひざをすりむいた。
 でも、まさか、その時フジツボの卵が傷口から入っていたなんて。しかもぼくの身体の中で育っていただなんて!
 人間の身体は海と同じ成分だってきいたけど、ほんとうにフジツボが育っちゃう環境なの?
 ううん。ちがうはずだ。都市伝説がはやった頃、調べたんだ。たしか、血液と海水がにているとはいっても、シントウアツっていうのがちがうから、人体でフジツボが生きられる確率はゼロパーセントだって。
 それなのに、なんで?
 脳みそがはれつしそうなほどのパニックだ。
「すぐに手術しましょう。そうすれば歩けるようになりますよ」
 お医者さんのことばでわれに返った。
 そうだ。ぼくは九月に入ってから今まで右足の激痛になやまされていた。
 そして、とうとう歩くのもつらくなった。悪い病気かもしれないと不安になって、病院に来たんだけど、こいつのせいだったんだ。
「ええ、ぜひ、お願いします」
 ぼくより早く、お母さんが答えていた。
 ぼくを苦しめたこいつを始末すれば、ぼくは今まで通り走れるんだ。