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よもぎ史歌
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明智サトリの邪神事件簿

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エピローグ


 ピッポちゃんはいつの間にかいつもの鳥の姿に戻って、わたしの肩にとまっていた。
 さっきは蜘蛛みたくなったけど、まさかあの邪神の肉を食べたから……?
 でも、もとからピッポちゃんは不定形だし、わたしが蜘蛛を見た直後だから、その印象が強くてあの姿になっただけかも。
 私たちは捕まっていた人たちを警視庁のビルまで連れて行き、みんな無事に保護された。
 連絡を受けた本物の絹枝さんも到着し、今度こそ姉妹は再会する。
 泣いて抱き合う二人を見て、ようやく今回の事件は解決したんだと実感した。
 でも……わたしは素直に喜ぶ気にはなれなかった。
 先生は事件の後始末をいつものように警部に頼み、わたしと一緒に家路についた。
 街灯もまばらな夜の歩道を、先生の後ろに付いて歩く。先生は何も言わず、無言で歩き続けた。
 わたしは先生を慰めることもできない……。
 その小さな背中に何を背負ってきたのか、先生は何も話してくれないから……。
 もう一ヶ月も、先生のお手伝いをしてるのに。
 まだわたしのこと、信じてくれてないのかな……?
 ……でも、当たり前だよね。わたしはいつも、先生の足を引っ張ってばかりだし……。
 と、ふいに先生が立ち止まった。
「……小林君。そういえば腹が減ったんだが……」
「……え?」
 突然、何を言い出すんだろう。
 わたしが唖然としていると、先生は振り向いて微かに微笑んだ。
「作ってくれるんだろう? スキヤキ」
「あ……」
 そういえば、捜査に出てからすっかり忘れていたけど、今日はそのつもりだった。
 先生はそんな他愛もないことを、ちゃんと覚えててくれたんだ……。
「は、はいっ!」
 わたしは精一杯の笑顔で答えた。