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機動戦士ガンダムワールドNG

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サンダスタウン


 機動戦士ガンダムワールドNGを購入して3ヶ月。
 プレイヤーは地球側・宇宙側・無所属の3つの中から所属を選択する。プレイを始めてしまった後でも、条件をクリアすれば所属の変更は可能なので、気軽に選べばいい。所属を選択すると複数あるスタート地点の街の選択画面に進む。それが済んだらこの世界の住人としての生活が始まる。

 各種攻略サイトや情報サイトがあるが幸いな事にゲーム内でも閲覧できる。そのサイトを見ながら自分のMS《モビルスーツ》を調整・カスタマイズする……そんな事を妄想してプレイしているのだが、現実と同様なかなか厳しいゲームだとプレイしてから実感させられた。

「ご苦労様。今日は上っておくれ」

 背後から掛けられた言葉は、NPC(ノンプレイヤーキャラクター)が発したパターン台詞1つ。今のは終了の台詞で、実行仕事がこれで終了となり成果を受け取れる。大きく稼ぐ事はないが、それでも短い実行時間でお金の5桁近くまでは稼ぐ。最初は上手く行かなかったこの機器整備の仕事も、整備スキルを上げた事で一気に稼げるようになったのが、密かに嬉しい。
 このゲームは開始直後、プレイがーが所持しているのはゲーム内通貨で10000C《クレジット》と初期服装上下と靴のみだけだ。各プレイヤーに最初からMS《モビルスーツ》の支給は無く、公式サイトを見る限り、MSを所持できるのは軍人と無所属を選択したプレイヤーのみと記載があった。

「んん~……ふぅ」

 ゲーム内であるが、俺は実際の現実と同じ様に大きく伸びをして固くなった体をほぐす……いや、ほぐした気分を味わう。現実の体はベットに横になっているから、実際伸びをしているわけではないが、アミュスフィアの特徴として脳に直接働きかける為、似たような気分を味わうのだろうか。
 とりあえず手にした整備ツールを装備欄から外して、持参アイテム欄へと移動をさせる。アイテム欄等を表示させるメニューは、プレイヤーの好みで左右どちらかの腕に装着された時計型端末を利用してウィンドウを表示させる。このウィンドウは自分以外に見えない為人通りの多い通りでも安心して操作ができる設計だ。

 俺がスタート地点の街として選んだのは、砂塵が舞う荒野に存在する街サンダスタウン。地球フィールドにあるスタート地点の一つ。現在の状態は中立という事でどの所属のプレイヤーも活動ができる為、比較的プレイヤーの数は多く賑わっている。各地域の陣地を取り会う対プレイヤー戦闘エリア、規模でいうと小規模エリアが複数あるため、頻繁にプレイヤーMSの修理依頼が入ったりする。プレイヤーMSの修理依頼が無くても、ミッションという形でNPCのMS修理があるため収入を得る事は容易い。
 プレイヤーMSの場合だと、依頼主が修理スキルのレベルに対して条件指定したりなど報酬が高い分厳しい。まあNPCのMSを修理するだけでも4桁……うまくいけば、6桁付近まで稼ぐミッションもあるので、プレイヤーMSの修理に拘る必要はない。
 所属の選択で無所属を選択した俺が整備の仕事で整備スキルを上げながら、他のクエスト等を繰り返しMSを手に入れたのは今から2週間前の事だ。

『MS-06F』

 ガンダムの1作目、連邦軍の敵であるジオン公国軍の量産型兵器として登場した通称ザクは、ザクⅡ《MS-06》シリーズに当たるMSだ。これより安いMSにザクの前身旧ザク《MS-05》というがある。プレイヤーの中には旧ザクをザクⅠ、ザクをザクⅡと呼ぶ人もいる。
 中古のザクを購入する前にザク以外の購入候補として考えられたのは、価格が近いガンダムWに出てきたリーオー、ガンダムXにでてきたドートレス辺りで悩んだ。
 無所属としてプレイ開始して3ヶ月、新品のMSを買える程お金が溜まる訳も無く他プレイヤーが売却した中古を買ったのだ。初めて手に入れたMSと言う事もあり、喜びは一塩だった。もちろん中古のMSは整備が必要で、整備が完了したのがだいたい一週間前になる。
 まさかMSに乗るまでにこんなに時間が掛かるとは思わなかったが、苦労が伴った分の感動は何物も及ばないだろう。たとえゲームだとしても、嬉しいものは嬉しい。

「よし、今日も操縦訓練だ」

 そうと決めた俺は、サンダスタウンの住宅地区に借りている自室へ戻らず、街の中央に位置する他プレイヤーも利用するMS格納庫へと向かった。格納庫へ向かう途中に通りかかる屋台通り。道の左右に屋台が所狭しと並び、売り子のNPCや他の街から仕入れてきた食材や自前の料理を売るプレイヤー達が、声を張り上げお客を呼ぶ。ゲーム内では擬似空腹機能があり、ゲーム内である程度時間が経つを空腹を感じてくる。空腹は地味にやっかいで集中力等に及ぼす影響は小さくない。空腹など気にしないという精神力の持ち主ならば食べなくてもいい。大概我慢するのは難しく空腹を感じたら素直に食事をする事をおススメする。
 現状それほどお金に困窮している分けではないが、MS格納庫手前の屋台通り端の店に並べられている痩せ細ったりんごを左手に取り、売り子のNPCへ話しかけた。目の前に購入確認ウィンドウが表示され、右手でOKのボタンに触れた。購入完了したアイテムは、一度強制的にアイテム欄へと移動させられる仕様のため、端末を操作しアイテム欄ウィンドウから左手にドロップさせる。ドロップしたりんごの重さを左手に感じ一口かじると、なんともいえない渋みを帯びた酸味が口の中に広がり、俺は少しだけ顔をくしゃめた。

 なぜこのリンゴを買ったかだって?一番安いからさ。

 初めて食べた時は驚いたのだがあのすっぱさは、なぜかわからないが病み付きになる。かじるたびに現実と同じようにりんごが欠け、5度ほどかじるとりんごは無くなり先程まであった空腹感が解消された。まあ、りんご1個だけでは満腹には程遠いけどね。
 独特の歩行音と車両の走行音が入り混じる大通りは、MSの歩行が可能な道でその足元を縫うように車が走っている。ゲームということも有り、実際だったらそれなりに大きいだろうと思われる振動はあまり感じられない。街の東西南北の入り口から中央で合流する大通り以外はMSの歩行できない。その大通りであっても街中ではスラスターを使用した高速移動は禁止されている。噂ではクローズベータの時に、プレイヤーがMSに踏まれる事があったらしいが、製品版ではMSに踏まれる事は無くなった。原則街中での戦闘は禁止とされている事を付け加えておこう。

 格納庫に着いた俺は、つなぎを着た青年NPCに話しかけ表示されたウィンドウを指でタッチしていく。

「ちょっと待ってな。今準備するよ」

 威勢のいい声で青年NPCは、倉庫入り口についているパネルを操作し始めた。あのパネルをこっそり触ったことがあるが何も反応しなかった。恐らくただのオブジェだろう。
 格納庫の床のベルトがスライドし始めると預けたザクがその姿を現した。ベルトの動きが止まった段階からMSへ近づくことが可能になる。足元の部分へ移動し右足内円部にあるスイッチを操作し、胸側から乗り込むタイプのコックピットのハッチを開く。続けて捜査してパイロット昇降用のリフトを降下させた。