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フォーゲットミーナット ブルー【第2話】

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【第2話】

「インスピレーションって信じる?」
「……は?」
「私、あなたを見てから、きっと仲の良い友達になれるって思ったの」
満足げに、目の前の美しい女性は微笑んだ。
ドラッグストアで出会った、川辺結衣と名乗るその女性は、私が会計を済ますまで店内で待っていた。そして「お茶でもしない?」と半ば強引に私の手を引っ張ったのだ。
カフェのソファに座りながら、私はずっと落ち着かず、時折ちらちらと壁時計に目をやった。
「ねぇ、恵里って呼んでいい? 私のことは結衣でいいから」
「あ、はい…」
「えーりっ」
「はい?」
「ふふっ。何だか楽しい。私、女の子の友達っていないから、こういうの憧れてたんだ〜」
女性……結衣は、楽しそうに笑う。
背はそんなに高くない。顔立ちはどこか日本人離れしていて、アンティークドールのように整っている。明るい色と、少しクセのある長い髪。歳はいくつだろう? きっと私と変わらないと思う。

「男友達はいっぱいいるんだけどね。私、なんでか女の子によく嫌われるんだ〜」
「…私もそんなに友達はいません」
たまーに携帯電話のメールでやりとりするだけで終わり。思えば“本物の女友達”なんて一人もいないのかもしれない。

「あ、やっぱり? そー思った! 私と同じ匂いがしたから」
「同じ匂い?」
「うん。マイノリティー」

結衣はニコッと嬉しそうに笑った。とても魅力的な笑顔。彼女が笑うたびに、周りがキラキラと輝いて見える。それに目を奪われるのは私だけじゃない。そばを通りかかる男性のほとんどは、結衣のことを見ている。
女の子に嫌われる、か。ただの妬みなんだろうな……って思う。

「私はただの暗い人間で……一人でいるのが好きなだけで。あなたみたいに魅力的じゃないです」
「あはは。本気で言ってるのー? ダメだよ、その考え方。恵里は魅力的で可愛いんだよ?」
「は??」
「一目ぼれってやつ? 恵里のこと見た瞬間、本気で友達になりたいって思ったもん」
「ひ、一目ぼれ……」

魅力的で可愛い。しかも一目ぼれ……。そんなこと言われたことない。私は照れるというよりも恥ずかしい思いでいっぱいになった。

「ねぇ、私のこと嫌じゃなかったら、これからも仲良くしてくれない?」
「い、いいですけど……」
「ホント? うれしーっ! じゃ、番号交換しようよ」

結衣はバッグから携帯電話を取り出す。彼女によく似合う、ベビーピンクの色をしていた。私は汚れるから嫌だって理由で、無難な黒の携帯電話をずっと使ってる。
赤外線通信でお互いの情報を交換しあう。学生のとき以来じゃないだろうか? アドレスと番号を教え合うのは……。

「いっぱいメールしてもいい? あと、また会ってくれるよね??」
「えぇ……」
「ホント!? 嬉しい! ね、指きりしようよ」
「え」

先月、22歳の誕生日を無事に終えた私が、指きりというような子供っぽいことをできるはずが……。でも、拒む余地もなく、私の小指は結衣の小指に絡められていた。

「指きりげんまん〜」

恥かしかったけど、私は黙ってそれにしたがった。

………彼女はとてもとても可愛らしい人。でもそれだけじゃない。
私の心は、結衣に絡め取られていた。安っぽいたとえをすると、赤い糸で。
だけど、いまの私にはそれが分かるはずもなく、夢でも見ているかのような展開に、ついていくのがやっとの状態だったのだ。


【つづく】