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ぽんぽんゆっくりん
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スクランブラー

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『スクランブラー』

 ~登場人物~
 雪藤詩歌/ユキトウシイカ 高校2年生の少女。
 加藤友三郎/カトウトモサブロウ 会社員の男性。
 龍造寺怜朝/リュウゾウジレイ 高校1年生の少女。
 西村/ニシムラ 前科ありの筋肉質の男性。
 黒住麟/クロズミリン TVディレクターの女性。
 幣原高明/シデハラカタアキ 某企業の専務の男性。
 薮慎一郎/ヤブシンイチロウ フリーターの青年。
 若槻/ワカツキ 若い娼婦のような少女。
 新渡戸稲造/ニトベイナゾウ 某企業の副社長の男性。
 月島つぼみ/ツキシマツボミ 高校1年の少女。
 高橋是清/タカハシコレキヨ 天然パーマの男性。
 白州雛乃/シラスヒナノ 高校1年の少女。
 多間木隆/タマキタカシ 大学3年の富豪の息子。
 若王子匠/ワカオウジタクミ 高校2年の少年。
 和合章真/ワゴウショウマ 中学3年の不良少年。

 第一章 赤み

 気がついたら、私はここにいた。
 目を開けたら何人もの人がいた。みんな知らない顔だ。
「大丈夫か? 君の名前は?」
 一人の男性が話しかけてきた。髪の毛は整っていて背広姿でピシっとしている。
「雪藤……雪藤詩歌です」
「そうか、私は加藤友三郎だ」
 自分の名前を言った後、彼は微笑んだ。
 だけどその微笑みは見ててとてもつらかった。
 そんなの当たり前だ、みんな目が覚めたらこんなところにいたというのだから。
 ドアがこの部屋にはひとつある。
 分厚い鉄で出来たドアだ。
 でも鍵がかかっていて開かないらしい。
 私は最後に目が覚めてみんなが説明してくれたので状況はすぐに分かった。
 何人かの名前も分かったし。
 いや、何でこんなところにいるのかは分からないけど―――
 それに記憶があやふやだ。
 ここで目が覚める前、私はどこにいたんだろう?
 部活帰り? それとも―――
 なぜか考えようとすると頭が痛くなる。
 そういえば今は何時なんだろう?
 でも部屋には時計がないしみんな腕時計を取られたと言っていた。
「本当にここ何処なんだろ……」
 誰かが弱弱しい声で言った。
 その声の主は背が低く、容姿がかわいらしい。髪は茶髪のツインテールだ。
 名前は龍造寺と言っていたのを思い出した。
 私と同様セーラー服を着ている。そのセーラー服の上にカーディガンを羽織っている。
 聞くところによると彼女は高1らしい。私よりひとつ年下ってことか。
「もしかして―――監獄かな」
「監獄じゃねェよ。それだけは言える」
 そこへ先ほど、西村と名乗っていた男が龍造寺に近づいて答えた。
 西村はがっちりとした体格の男だ。スキンヘッドに耳には金色に輝くピアス。
 身長も180cmはゆうにあるだろう。年齢は30代後半くらいか。
 かなり喧嘩慣れしていそうで、派手なシャツを着ている。
 どう見ても善良な市民には見えない。
 監獄じゃないと言い切るのも、その場所がどんなことかよく知っているからだろう。
「なんでそんなこと分かるのよ」
 黒住が分かりきったことを西村に言った。
 ノースリーブでジーパンの格好の20代くらいの女性。
 髪はミディアムで茶髪がかかっていてモデルかと思わせる見事な美人だ。
「大体想像がつくだろ」
「やっぱり入ったことあるの?」
「ああ、多すぎるくらいにな」
 なんだやっぱりという空気が部屋に充満しているのが分かる。
「畜生!!」 
 急に誰かが叫んだ。
 全員がその声がした方を向く。
 縞のスーツに縞のネクタイ。
 靴も牛の皮か何かの上等な物だ。
 髪はオールバックの30代くらいの男性だ。
 多分仕事帰りにつかまったんだろう。
 名前はたしか幣原だったと思う。
 幣原は部屋に初めからあった蝋燭立てを地面に投げつけた。
 それがパリーンと気持ち良い音を立てて割れた。
「なによ、急に叫んだりして」
「目が覚めたら知らないところだなんてこんな話があるかッ!?」
 幣原さんがすぐに返答する。
「へぇ~アンタ酔っ払ったことねぇのか?」
 小馬鹿にしたような口調が部屋に響く。
 髪は茶髪でパーマがかかっている20代前半くらいの男性。
 名前はたしか藪。
 顔は結構なイケメンだ。
 でも繁華街とかでナンパばっかしてそうなイメージが強い。
 俗に言うチャラ男か。
「俺はバカじゃないし酔っ払ったこともあるがこれは違う! これは誘拐だ!!」
 分かりきったことだ、と私は思った。
 まわりを見てみたらみんなそんな顔をしている。
 そんな雰囲気を気にせず幣原は続けた。
「先週こんな小説を読んだ! ジャーナリストの男が紛争地帯に行った。そしてそこにあるホテルに泊まっていると後ろからバン!!」
 幣原が拳で音を鳴らすと、そのすぐ前にいた龍造寺がビクッと反応した。
「―――目が覚めたら、見たこともない部屋だった。ヤツはそこで34年間過ごすことになる」
 34年―――まだ大人にもなっていない私の胸にこの単語が深く刺さった。
 まわりのみんなも同じだろう。
 隣にいる加藤さんが脂汗をかいているのが分かる。
「34年? ありがたいねぇ、そんな長い期間飯にも寝床にも苦しまないってんなら大歓迎だぜこっちは」
「お前ッオレを馬鹿にしてんのか!?」
 幣原さんが藪さんに殴りかかろうと拳を握った
「まぁまぁ落ち着けって、アンタが怒ってる理由も分かるよ。それだろ?」
 私は藪さんが指をさした方を見た。
 黒のケースだ。開いていて中身は空っぽだ。
 私が目を覚めた時からすでにあの状態だったので、誰のものか知らなかった。
 というよりもともとこの部屋にあるものかと思っていた。
 幣原さんのものだったのか。
「なーんのことかと思いきや、そんなのみーんな一緒よ」
 栗色のポニーテールの女性がそう言う。
 名前は若槻。
 背が低くて肌も白く、フランス人形のようにかわいい。
 しかし白色のすごく短いシャツを着ていて、肩が剥き出しだ。
 外見とは打って変わり、おしとやかな性格とは言い難い。
 年齢は私と同じくらいか。
「私だって腕時計も財布もケータイもとられ「「黙れ!!」」
 若槻さんの声を幣原さんの声が遮った。
「このケースに入っていたのはお前がとられたモノなんかよりずっと貴重なものなんだ!!」
 貴重なもの―――
 私もポケットに家の鍵とティッシュ以外何も入っていない。
 この人にとっての貴重なもの―――
 会社の資料とか?
「じゃあ何が入ってたのよ?」
「お前に話す筋合いはない」
「自己中な男ねぇ。みーんな持ち物とられてるっていってんじゃん。それをグダグダと馬鹿の一つ覚えみたいに―――」
「ハッお前はそうかもしれない! その身なりからしてなんだ、身体売ってんのか? 股しか開けないような女の持ちモンに価値もクソもねぇだろうよ!!」
「何!? もぅいっぺんいってみな!!」
「黙れ! クソ女!!」
 2人が取っ組み合いになっている所を加藤さんが素早く間に入って止めた。
 人は見た目では判断できないってのは本当らしい。
 若槻がここまでとは思わなかった。
 せっかくの容姿が台無しだ。
 それを見て西村がニヤニヤ笑っている。きっと喧嘩好きなんだろう。