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アイ・ラブ桐生 第一章 4~6

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 市街地の西北部で、
繁華街をすこし外れた通りに、地下、1,2階ともに、
20~30人は入れるという大きなフロアーを持った喫茶店があります。
ここは今も昔も、学生たちの溜まり場です。


 地元の絹織物産業で、
図案士になりたいという夢が閉ざされ、
挫折した私が、それならばということで、
板前修行に通い始めました。


 高品質で知られ、隆盛を極めてきた桐生市の繊維産業は
海外から輸入される安い絹製品に市場を席捲され
、窮地をむかえました。
長引く不況の波にも襲われて、長く続いてきた機織りの歴史が、
終焉を迎えはじめた時期でした。
しかしどこまでも挫折感をひきずったままで、
あまり気乗りのしない、中途半端な
板前修業の見習いです。



 その鬱積と生来の好奇心が70年代の若者たちの間で、
大きなうねりを見せはじめた、
政治的な青年運動の場へと向かわせました。
青年運動の中心グループと、某サークルのサブリーダーを
務めていた関係で群大・工学部の学生たちとの
交流がたくさん生まれました。


 工学部の寮生たちのほとんどは、県外からやってきます。
二年間を、前橋市にある教養学部の荒牧キャンパスで過ごしてから、
桐生に作られた工学部の学生寮へ移動をします。
青年人口の密度が比較的高い桐生市では、
見知らぬ若者同士を繋ぐ多彩な取り組みが日常的に、
盛んに開かれました。
スポーツや文化交流活動をはじめ、
歌声喫茶なども頻繁に開催されて、同じ年代同士の交流が、
きわめて早い速度ですすみました。


 学生と社会人がいち早く交流を始めたのも、
群大・工学部のこうしたシステムと、桐生独自の
文化と風土によるものです。
余談ですが・・ここで知り合った多くの学生たちとの交遊は、
南は鹿児島から、北は北海道までの広範囲にわたり、
今でも季節ごとの便りが届きます。
小さな町で育まれた、手紙だけの長い付き合いは
すでに40年を越えました。