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D.o.A. ep.17~33

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第2軍は、軍港の海軍をよくたすけたが、敵砲弾の猛威にいくらも犠牲者を出した。
そこで、軍港の装備や砲弾や食料を残さず持ちだし軍港をいったん明け渡してしまうことを、軍港の司令部や軍港責任者リース中将に申し入れた。
占領されても、後で総力を持ってとり返せばよいのだと諭してもみた。
ところが最後まで軍港をまもろうと首を縦にふらぬリース中将に業を煮やし、第2軍はそれらを勝手に運び出したのである。
負けたあげくそれらを敵に与えては陸軍がはなはだしい不利をこうむるからという判断であり、物資に目がくらんだわけではない。
それでも、リース中将は大いに怒りをおぼえた。
防衛船隊長官のエンボリスとはちがい、なにかと頭に血がのぼりやすい男だった。
その怒りのままに、盗人第2軍のたすけなどいらぬと怒鳴って、追い出してしまったのである。
第2軍は食い下がったが、無駄だった。
ラドフォード元帥はこの部分を読んだとき、なさけなさにふるえた。
こんな茶番としかいえない理由で、軍港は海軍独力での防衛を余儀なくされたのである。
あわれなばかりなのは、軍港を必死でまもる海軍軍人と兵らであった。
軍港にのこされたのは、失礼ながら防衛船隊よりいささか質の劣る軍人たちが多いのだが、彼らはそれなりによく戦った。
船にむかって、陸から大砲で狙うわけであるから、常識から考えて軍港側が不利ともいえない。
しかし、敵の砲弾が異常すぎた。
よく飛び、防衛船隊の報告どおり、やたら爆発するのである。
これによって、大軍港にとどまっていた船たちは、ほぼ全滅した。
そして敵船は、速いのはともかく、気持ち悪いくらいに整然とうごいた。
相手にするのもいやになったが、この頑強な軍港を拠点にされてしまったらまずいのである。
守りたい割に、リース中将はその観念がうすいようにおもえ、憤る者も少なからずいた。
陸軍の盗人行為ごときで追い出すまでしなくてもいいだろう、と。
リース中将は軍人としてより所有者としての意識がつよく、軍港を抑えられる戦略的な脅威より、「私の軍港」という認識が先だつ。
彼は軍港あたりの有力者であり、つくる際にだれよりも出資している。
敵船も、軍港で狼藉を働いた者も、同等とはいわないが、彼にとっては憎むべき敵にみえていた。
だが、そんな個人的な心情で、せっかくの援軍を追いやられてはたまったものではなかった。
敵砲弾は、かぎりなく軍港に降りそそぎ、多くの兵や軍人の神経を参らせはじめていた。
リース中将はここで、第2軍を追い返したことを後悔しだしたらしいが、いささか遅きに失した。
彼らの疲労が濃くなってきた頃の夜半、ついに軍港に大量の敵船が押し寄せ、上陸をゆるしてしまったのだ。
海軍は必死で防戦したが、まるで大人と子供の戦いのようだった。
1体のオークが、計算上3人分の力を持つが、実際はそれ以上の強さだった。それが大群で押し寄せるのである。
司令部は撤退を進言したが、「私の軍港」といってはばからなかったリース中将は運命を共にすることを決めていた。
頑としてゆずらない彼を説得するほどの余裕もなく、司令部は独断で第2軍の提案を選択した。
その選択が後々どのような難をもたらすかもわきまえず、軽率にも持てるだけの物資をかき集めて、退却を開始したのである。
砲は方向を変えられては奪還の際に差し障ると、使い物にならなくしておきたかったが、すべてはできなかった。
ここで海軍は、いくら犠牲が増えようと第2軍に救援を恥を忍んで要請し、到着まで踏みこたえるべきだった。
しかし、オークのおそるべき暴威に、司令部はすっかりひるんでしまったとおもわれた。
こうして死体と生けるたった一人となった軍港は陥落した。
ひとえにもふたえにも、人事ミスとしかいえなかった。
軍港を守るべく、最適の性質を有する者を責任者に据えたつもりが、裏目に出たのだ。

防衛船隊を倒して無防備となった海を、兵力を満載した敵船が続々と渡ってきていた。
オークどもはそれらの軍港への集結を待つように、居座っている。
海上がほぼ無防備になった以上、敵船の上陸が天然の良港などからいつ行われないとも限らなくなり、各軍は警戒を怠れない。
無論、撤退してきた軍港人員の報告を聞いたラドフォードは、すぐさま奪還しようとした。
よって軍港にもっとも近い第2軍が、一度だけ突撃をかけた。
兵数は圧倒的なのだから、さほどの苦労もいらずとり返せるとたかをくくっていたのである。
ところが、軍港に突入して、ほどなくあのおそろしい砲弾の洗礼を受けるはめになった。
さいわい、あの砲弾は軍港内がせいぜいの射程距離であったので、オークが港内から出てきさえすればよかったが、いくら誘い出してもどっかり腰をすえていてうごかない。
おそらくは、兵力の集結を待ち、そろったところで一挙に攻勢に出る気であろう、と踏んだ。
死傷者が増えることをよしとせず、第2軍はほどなくすごすごと退却した。
結果軍港に増えるオークを、自発的に出てきてくれるまでは指をくわえて見ていることしかできなかった。


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作品名:D.o.A. ep.17~33 作家名:har