小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

「初体験・ダイエー編」 第一話

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
ダイエー編 第一話


昭和46年雄介は高校を卒業して志望校の京都産業大学に入学した。実家の守口からの通学はなかなか大変だった。京都市郊外の上加茂にあった校舎まで一時間半は費やしていた。それでも学園生活は楽しかった。コンピューターに接する講義や実習は充実していたし面白かった。
いつしか学校とは反対方向になる佳恵との付き合いは少なくなっていった。佳恵も短大に進みサークル活動やアルバイトに時間を費やすようになってゆっくりとではあるが雄介との時間を待てるように変わっていた。
最近買い物は商店街ではなくスーパーに出かけることが多くなっていた。大阪ならなんと言ってもダイエーだ。千林(せんばやし)の「主婦の店」からスタートした中内さんは一代で最大手のスーパーマーケットを築き上げた。

京阪電車の守口市駅から京都方面に三つ行った大和田というところに新しくダイエーがオープンすることになった。アルバイトを募集していたので雄介は定期券があるし通学の途中で無理なく通えるということで応募して採用となった。
駅前にあったレコード店から行きかえりにヒット曲が聴けることも嬉しかった。なんと言ってもこの年の最大のヒット曲は「また逢う日まで」だった。尾崎紀世彦の唄う「二人でドアーを閉めて、二人で名前消して~」というさびが印象的で、この年のレコード大賞になった。

大和田駅のダイエーは「ダイエー大和田店」という名称だった。地下にレストラン街、一階が食品売り場、二階が衣料品売り場、三階が家具寝具などの日用品売り場となっていた。開店の初日はものすごい人でごった返して、レジの行列が店の壁まで続いているような状態だった。
雄介はサッカーと呼ばれるレジの横で商品を袋に詰める作業をしていた。うまく入れないと渡された大きさの紙袋に全部入らなくなるので練習はしてきたが本番それも混雑で急がされている状態ではうまく行かないこともあり、お客から「早くしろ!」と怒られたりした。
休憩時間に地下にあったレコード楽器店で好きなレコードを探したり、聞いたりすることが楽しみだった。ショーケースに入っていたギターをいつかは買いたいとも考えていた。値札には5万円とついていた。時給150円の雄介には333時間働かなくてはならなかった金額の高級品でもあった。

久しぶりに佳恵から電話が掛かってきて映画でも見に行きたいと言われた。バイトを休みたくはなかったが、一日無理を言って日曜日に休みを取って佳恵と梅田で待ち合わせをした。

「雄介、何が観たい?」
「やっぱり・・・ゴットファーザーだろう、嫌か?」
「やくざ映画なんじゃないの?」
「マフィアだろう」
「同じようなもんじゃないの?」
「まあな・・・アメリカか日本かの違いだけどスケールが違うぞ。それに音楽も好きなんだ」
「愛のテーマね・・・曲と中身が合ってないような感じだけど・・・いいわよ私は」
「じゃあそうしよう。今度は佳恵の好きなものにするから・・・」
「うん。映画の後はどうするの?」
「そりゃ腹ごしらえだろう、お好みにするか?」
「いいけど、その後は?」
「はっきりと言ったらどうだ?どこへ行きたいのか」
「もう!雄介ったら・・・大学で誰かいい人でも見つけたの?私に飽きたの?」
「何故そんな事を言うんだい?この頃変だぞ」
「変じゃない!雄介が冷たくなったからそう言っただけ・・・はっきりと言ってくれてもいいのよ」
「おい、まずな誤解するなよ。俺はバイトが忙しくて逢えなくなっているんだ。冷たくなんかなってないぞ・・・こうして逢っているじゃないか」
「何故そんなにバイトばかりしているの?お金が要る事があるの?」
「佳恵、俺の家はお前の家とは違うんだ。自分のお金で学費までは無理だけど小遣いと衣装代ぐらいは賄いたいんだよ。弟たちにも少し分けてやっているしな。父親がしっかり仕事しないから母が苦労している。誰かのせいにするのがいやだから自分でやるんだ。いやならもう逢わない・・・」
「雄介・・・ゴメンなさい、そこまで思って無いわ。淋しかったから聞いてみたかっただけなの・・・無理は言わないから仲良くして・・・雄介しか好きになれないから」
「佳恵、すまん・・・言い過ぎたな。俺だって佳恵だけがすきなんだよ。本当だ。ずっと仲良くして結婚しよう・・・卒業したら」
「本当!ほんとうにそう思ってくれているの?」
「ああ、そのつもりで付き合っているよ。お前もそうだろう?」
「うん!絶対ね・・・わがまま言わないから。ご飯食べたら・・・帰るわ」
「佳恵、お前の好きなところでいいよ。しばらく無かったからな・・・俺もしたいし」
「雄介・・・恥ずかしい・・・」
「今になってなに言ってるんだ・・・でもそういうところが好きなんだけど」
「いじわる!」
「阪急プラザでやってるから行こう。最近出来たステレオスコープのパノラマ映像らしいよ」
「なにそれ?」
「よく解らないけど宣伝にそう書いてあったから・・・画面が大きくて飛び出すように見えるらしい」
「すごいのね、楽しみ」

初めて観た横長画面の浮いているように見える映像とマルチスピーカーシステムによるステレオサウンドは迫力があり、これまでの映画とは一線を画していた。雄介は終わってからパンフレットを購入した。サウンドトラック盤のレコードも買った。他にポールモーリアのオーケストラ盤とアンディウイリアムズが歌うレコードが発売されていて歌が好きな雄介はアンディのレコードもあわせて買った。
カラオケなど無い時代であったから何度も何度も聞いて歌詞を覚えてソラで口ずさんでいた・・・speak softly loveと始まるアンディの甘く響きのある歌声は雄介の心を捉えていた。

阪急プラザ映画館はとても大きく綺麗なところであったが、唯一上を阪急電車が走っていて時折その通過音が聞こえてしまう欠点があった。静かな場面では気になってしまう。

「映画は良かったけど、電車の音はいただけなかったなあ・・・」
「うん、そうね。静かなところでは気になったものね」
「そうだな。お好み食べに行こうか?」
「いいよ」
雄介はすぐ近くにあった店に入って自分で焼いて食べた。もちろん佳恵の分も焼いてやった。うまく両方からコテでひっくり返すと手を叩いて喜んでいた佳恵が可愛く感じた。イカ玉と豚玉を頼んで半分ずつ分けて食べた。ビールを飲もうと思ったが昼間だったので辞めた。阪急東通をぶらついて目的のホテルに入った。日曜日とあって混んでいた。エレベーターの中でもう一組のカップルと偶然一緒になってしまった。
雄介は相手の女性を見てその堂々としている態度に驚かされた。佳恵は自分にくっついてうつむいてじっとしていたのに対して、その女性はなんと彼とおしゃべりをしていたのだ・・・世間話ではあったが酔っていたのであろうか雄介の顔をチラッと見て笑っていたようにも感じられた。

「さっきのカップルの女性すごかったね。佳恵は見たかい?」
「うん・・・話ししていた人でしょ?」
「そう、酔っていたのかなあ・・・堂々としてたから驚いちゃったよ」
「ふ~ん、見てたのは態度だけ?」
「じゃあなに?」
「胸とか・・・」
「大きかったっけ?見て無かったから知らないけど・・・佳恵は見たのか?」