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察人姫-第壱話-

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 四時間目終了を告げるチャイムが鳴る。
 これから昼休み。
 授業を終えた生徒が続々と食堂や購買部に押し寄せる。
「とりあえず間に合って良かったね」
「ああ、全部確認できたしな」
「……お前良いの食いやがって畜生、午前中ずっと付きっきりだった俺に何もなしかよ」
 生徒達が慌ただしく移動するのを警備室の窓から見ながら鰻丼(特上・大盛)を食べるソラとユーイチに対して訴えるように呟くコンビニ弁当の藤村。
「あ、じゃあ沢庵でも……」
「鰻を寄越せっての!……あ、やべっ、沢庵激ウマ」
 経費として理事長が注文してくれた二人の昼食は合わせて二千円。
 付け合わせの沢庵まで特上だった。
「にしても先人は偉大だよな、沢庵和尚だっけか?何って大根を飯の友にまでしたのかね……」
「大袈裟ですね。そんなこと言ったら蕎麦とか謎の謎ですよ」
「まあ、そうだな。けどやっぱ昔の人はスゲーよ」
「そうですね。ま、昔の人が皆凄いとは限りませんけどね」
「んだよ、ひねてんなー」
「いえいえ、ただ昔はああだったこうだったってのが好きじゃないんですよ。今の若者はああだ……とかも」
「ああ、それ分かる。普通に年輩の人でも電車待ちの割り込みとかマナー違反あるよな」
「ええ、だから一括りにされるのが嫌なんですよね。ただ、一つだけ昔の方が良かったって思うものはあります」
「へえ、なんだよ?」
「教育……ですよ。まあ昔とは言っても少し昔ですけどね。最近の教育は温すぎると思うんですよ」
「うはっ、そんな話は教師とでもやってくれ」
 そんなユーイチと藤村の会話が飛び交う食事も終わり、五時間目が始まる二十分前。
「よ、お疲れさん」
 寅田宗彦が警備室に現れる。



作品名:察人姫-第壱話- 作家名:朝朽 司