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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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夏色のひみつ

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 次の日、午前中にゆきちゃんとなみちゃんが来た。
 なっちゃんの部屋でいろんな資料を見せてもらって、いろいろメモしていた。わたしはそばで話を聞きながら、本で埋っているなっちゃんの部屋をきょろきょろながめていた。
 夕べは暗かったのでよくわからなかったけど、こうして見ると、なんだかなっちゃんの部屋は、あんまり女の人の部屋って感じじゃないような気がした。そんなこと言うと叱られちゃうけど。
 ゆきちゃんとなみちゃんが海に行こうと誘ってくれたので、午後から出かけた。
 海水浴場に行くと人がいっぱいで、ちょっといやだったけど、でも、仕方ないかなと思っていたら、
「ここじゃないよ」
と、ゆきちゃんが言った。
「すごくいいところがあるの。こっちにきて」
 なみちゃんが先頭になって、海水浴場を通り越していった。磯の岩づたいにつきだした崖の裏側に行くと、こぢんまりとしたきれいな砂浜があった。
「わあ、きれいな砂浜」
 わたしはちょっと感激だった。
「ここは磯がひいている間だけ、砂浜になるの。岩場の間でプールみたいでしょ」
 ゆきちゃんはそういいながら、手首や足首を回して準備運動をしている。なみちゃんもやりだしたので、わたしも見よう見まねで手足をぶらぶらさせた。
 エメラルドグリーンの透き通った水は、ひんやりして気持ちよく、岩場から岩場へ競泳したりもぐったり、三人で思いっきり遊んだ。
「この貝は食べられるんだよ」
 岩の裏側にくっついていた三角の巻き貝をとって、なみちゃんが教えてくれた。たくさんあるので、夢中になってとった。
 こんなに楽しいいなかなのに、お母さんはどうして連れてきてくれなかったんだろう。ゆきちゃんやなみちゃんとも、もっと早く友だちになれたのに。
 そんな思いが頭の中をかすめた。
 貝を捕りながら、いろんな話をするうち、なっちゃんのことになった。
「え? じゃあまゆちゃんは、なっちゃんがどうして独身か知らないの?」
 なみちゃんがちょっと驚いたふうに言った。
「うん。だってあうのは久しぶりだもん。電話では話してたけど。お母さんもあんまりそのことは言わないし」
「そうか。わたしたちの担任のたかこ先生が、夏海さんと友だちなのね。先生によると、大学生の時大恋愛したんだって。でも、その人が死んじゃって……」
 ゆきちゃんはいいかけて、しまった、という顔をした。
「ごめん。よくないよね。こんな話」
 ゆきちゃんがあやまった。
「ううん。教えてくれてありがと。そういうことじゃあ、お母さんだっていいたくないよね」
 それでもわたしの知らないことを二人が知っていたのは、ちょっとショックだった。わたしがぷっつり黙り込んだので、二人は気をつかって、そのいきさつを話してくれた。
「ごめんね。たかこ先生だって、みんなに教えたんじゃないの。ふたりだけよ。あんまりわたしたちがしつこくきいたから」
「だって、ほら、なっちゃんてきれいでしょ。それなのに独身なんてもったいないなって」
 なっちゃんはみんなに人気があって、個人的な質問もいっぱいされているそう。
「どうして独身なのか聞かれて、王子様がまだ来ないなんて冗談を言ったの。でも、すごく悲しそうな顔をしてたから、わたしたち気になって。ね、なみちゃん」
「そう、たかこ先生に聞いたんだ。先生も困ってたけど、わたしたちにだけを教えてくれたの。もちろん、だれにも話してないよ」
「そうだったんだ」
 ゆきちゃんとなみちゃんのいうことは信じられると思った。
 大学生の時に婚約した人がいて、その人が亡くなったから……。忘れられなくて結婚しない。それほど好きだったんだ。
 なんだか、なっちゃんてすごく純情なんだなって、感動しちゃった。

作品名:夏色のひみつ 作家名:せき あゆみ