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舞うが如く 第六章 7~9

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舞うが如く 第六章
(7)総司の遺品


 「お初に、お目にかかります。
 沖田林太郎と申し、総司とは義兄の間柄にあたります。
 私も、天然理心流・試衛館道場の免許皆伝を得た剣士のひとりです。
 法神流には、小太刀と薙刀を得意といたす、
 天下無双の美人剣士が居ると、つねに京よりの総司の手紙にありました。
 まずはぶしつけながら、
 本件の用事の前に、一手のご指南いただけると嬉しいのですが。
 お手合わせを、お願いいたします。」


 
 いぶかる琴の様子を見て、
林太郎が、あわてて言葉を付け足しました。


 「あいや・・・・
 ご心配にはおよびませぬ。
 当方は妻子持ちにて、
 勝った負けたでどうこうしようというつもりなどは、
 毛頭もありませぬ。
 あの総司から、見事一本取ったという琴殿の技量に
 興味を抱いたまでのことにありまする。」



 尊拠から一礼をして立ち上がると、
双方、2間ほどの距離を保ってともに正眼に構えて対峙をしました。
間合いを計り合うこと数分、先に林太郎が動きます。
短い気合と共に、鋭く一歩を踏みこんで
真正面から面を打ち込んできました。


 頭上の手前でその竹刀を柔らかく受け止めた琴が、
一歩退いてから、その足を軸にしてくるりと半回転をしました。
手ごたえも与えずに、林太郎の竹刀の勢いをそのまま
さらりと受け流してしまいます。



 さらに反対側の足の上で半回転をした琴が、
しなやかに返す竹刀で、
林太郎の空いた胴を綺麗に横一閃なぎ払いました。