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世捨て作家
世捨て作家
novelistID. 34670
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HOPE 第一部

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Prologue 夕暮れ


 夕暮れ時の真っ赤な空は、とても眩しかった。
 所々に植えられている枯葉が茂る木蓮からの木漏れ日が、ぬかるんだ地面をオレンジ色に染めている。
 あまりの眩しさに、思わず目を瞑った。
 目を瞑れば何も見えなくなる。
それと同じ様に、自らが抱く悩みさえも見えなくなり、忘れる事が出来るような気がした。
 しかし、それはただの現実逃避だ。
 こんな無意味な事をしている自分が、情けなく思えてくる。
「馬鹿らしい」
 そう呟いて、目を開けた時だ。
 逆光で良くは見えないが、何かが地面を目指して落下するのが見えた。
「何だ? あれは」
 地面がぬかるんでいる上に、枯葉が大量に散らばっている為、あまり衝撃のある音は出なかった。
 落下したそれが気になり、恐る恐る近寄ってみた。
 ほんの少しの恐怖心と好奇心が混ざり合った様な、妙な感情が僕を動かす。
 少しずつ近付いて行く度に、それの正体が明らかになっていく。
 腰まである長い髪を乱れさせ、地面にうつ伏せで横たわる細い少女の体。
 頭から鈍く流れる真赤な血。
 そして、左腕に巻かれているリストバンド。
 頭の中に一人の少女の名が浮かぶ。
 沙耶子。
 ここに倒れている少女は沙耶子だった。
「あ……あああぁぁ」
 喉の奥から押さえる事の出来ない悲痛な声が出てくる。
「ぁぁああああ‼」
 やがて、その声は絶叫に変わった。
「どうして……」
 どうして、沙耶子はこんな所で倒れているのだろう。
 どうして、こんな事をしたのだろう。
 数々の疑問が頭の中に浮かび、ある考えに直結する。
 ここ最近の彼女の行動。
 それは常に僕と共にあった。
 ならば、こんな行動を取った原因は……全て僕にあるのではないか。
 僕の抱いた疑問は恐怖へと変わり、やがて罪悪感へ変わった。
 とても嫌な気持ちで胸が一杯になり、この場から早く逃げ出したいと思う感情が、僕を無意識の内に走らせていた。
 走る度に吐き気が込み上げて来る。
 必死に口を抑え、込み上げる吐き気と格闘しながら、一目散に走った。
作品名:HOPE 第一部 作家名:世捨て作家