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てっしゅう
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「初体験・万博編」 第一話

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第一話


一年で一番寒い大寒が来て今年初めて雪景色となった23日の金曜日に雄介は学校から帰ってきて電話を佳恵にかけた。
「井上です。佳恵さんいますか?」
「雄介さん・・・ちょっと待ってね。佳恵!雄介さんから電話よ」
「はい、佳恵です」
「俺だ、雪がすごいな、学校に行けたのか?」
「何とか・・・ね。休んでいた子もいたけど、仕方ないわね。雄介は?」
「歩きだからね、遅れてでもいけたよ。多分明日には融けると思うけど、もしまだ雪が降っているようならどうする?」
「梅田なら雪は関係ないから私は構わないよ。雄介が来れるなら」
「電車が止ってない限り行けるよ。寒いから暖かい格好で来いよな」
「うん、ありがとう」

土曜日は雪も止んで青空が見えていた。部活を2時に終了して雄介は自宅へ帰って着替えをして守口駅から梅田に向かった。
今年は3月から大阪万博が開催される。街のあちらこちらにポスターが張ってある。日本で初めて開催される万国博覧会だ。第一回目のパリではエッフェル塔がシンボルになっていた。会場になる吹田の千里中央にはシンボルタワーの「太陽の塔」が建設されていた。岡本太郎氏の独特のデザインの建造物は一見してそこが万博会場であることを見つけられるだろう。

佳恵と待ち合わせして地下街で雄介が欲しかったVANのボタンダウンシャツを選んで買ってもらった。
「私と同じ年になるのね、17歳」
「そういえば・・・佳恵はお姉さんだなあ」
「半年だけじゃない。そんな言い方して」
「そうだな、17歳か・・・」
「三月から万博が始まるね。前売り券買った?」
「多分学校から行くよ・・・それとも一緒に行こうか?」
「混んでいるでしょうね。父と母が一緒にオープンしたらすぐに行こうって言ってるの」
「そうなんだ。興味があるんだねお父さんが」
「そうみたい。久しぶりに家族で出かける。雄介とも行きたいけど、ちょっと後でもいい?」
「構わないよ。それより俺いいところ見つけたんだ。そこに行こう」
「ええ?どこ」
「着いて来いよ。東通に出るから」
「遊ぶところ?」
「二人きりになれるところって感じかな」
「ホテル?」
「違うよ。行きたいのか?」
「二人きりって言うからそう思っただけ・・・」
「今日はゆっくり出来ないから止めて置こう。そこでちょっとだけ仲良くするんだ」
佳恵はそれ以上聞かなかったが、やがて着いた場所は喫茶店でどうって事は無いと思いながら二階へそして三階へ階段を昇っていった。
入り口が真っ暗になっていたのでどうしたのだろかと待っていたら、店員が近寄ってきて、「こちらへ」と道案内をしてくれた。
目が慣れてきて実は真っ暗ではなく薄明るい感じの場所だった。ボックス席になっていて座っているもの同士の顔は見えなくなっていた。
いわゆる「同伴喫茶」だった。

飲み物を注文して目が慣れてきた佳恵は隣のカップルがキスをしているのがはっきりと解った。それもかなり大胆にしていた。年齢は自分たちより上だったが、ちょっと刺激的に映った。

「佳恵、隣を見るな。目が合ったら・・・いやだろう」
「だって・・・初めてなんだもん、こんなところ。雄介は誰と来たの?」
「初めてだよ、もちろん。聞いてきたんだ友達にここの場所を」
「本当よね?」
「うそ言わないよ」
「ならいいけど・・・」
二人は手を繋いでやがて人目を気にしながらもキスをした。雄介はスカートの中に右手を忍び込ませた。少し抵抗した佳恵だったが雄介の手首を掴んでいた左手を離した。より強くキスをして,雄介の指先に感じ始めていた。

阪急東通商店街はショッピングと若者が集うディスコ(ゴーゴークラブ)それに飲食店、パチンコ、喫茶店などがひしめく歓楽街であった。
特にディスコは流行っていてミニスカートのダンスをする女性が台の上に立って腰をくねらせるように踊っていた。周りを取り巻くようにアベックやナンパ目的の男女がゴーゴーサウンドに乗って踊っていた。「悲しき鉄道員」「ヴィーナス」「マルタ島の砂」「マミーブルー」「ノックは三回」などのアメリカンポップサウンドとエレキサウンド(ロックではない)が場内には大音量で流れていた。
そこで盛り上がった男女が同伴喫茶を利用する。最初は普通の喫茶店へカップルで入っていたのだが、イチャイチャするので店側が考えた代物だったのである。料金はチャージ料が別途かかったが、500円ぐらいだったから安いものである。

店を出た二人はすっかり暗くなった商店街を歩き梅田に向かっていた。しっかりと肩を寄せ合って歩きにくそうにしていたが、今はこうして少しでも引っ付いていたいと佳恵は思っていた。雄介も同じだった。

「雄介は・・・我慢できるの?」
「何が?」
「だって・・・私だけだったから」
「帰って自分でするよ」
「そんな事してるの!」
「男はみんなそうだよ。気にするなって・・・当たり前の事なんだから」
「ホテルに行ってもいいよ・・・」
「ありがとう。気持ちだけで満足だよ。今日は帰ろう・・・そういう約束で来たから、ね?」
「うん・・・今度は・・・仲良くしたい」
「佳恵の気持ち嬉しいよ・・・ゴメンな、帰るって言ったりして」
「そんな事ないよ。気にしないで・・・」
「佳恵も・・・自分でする?」
「恥ずかしいこと聞かないで!」
「じゃあ・・・するんだ」
「そんなこと・・・しない」
「我慢できるんだね」
「男の人と違うのよ・・・気持ちがあればそれでいいの」
「ふ~ん、いいなあ、俺なんか・・・止めておこう」
「言い出してなに?」
「佳恵が好きだよ」
「ごまかしてる・・・でも嬉しい、私も大好き!」
「そうか、ずっと一緒に居ような」
「うん」

阪神電車の梅田駅にあっという間に着いた。
「今日はプレゼントありがとう。今度逢う時に着てくるから・・・じゃあな、電話するから」
「じゃあ、絶対電話してね」
「するよ、バイバイ」
「待ってる・・・バイバイ」

今度は雄介が佳恵の姿が見えなくなるまで手を振って見送っていた。