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私の世界、狭い世界。あなたの世界、大切な世界。

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あるところに一人のお姫様がいました。
 小さな国の小さなお城。お姫様はいつも窓から外を見ていました。外に出られないお姫様がいつも見る物は高い、高い灰色の塀でした。
 決して超えられない壁。いつも兵士や、調教された猛獣たちに守られている――否、見張られている。
「いつ、私は白馬の王子様が向かえに来てくれるのかしら?」
夢見る姫は空を見上げた。
 この牢獄から出られるのはいつになるのか。
 お姫様は現実から目を背けるように目を閉じた。
 ゆっくりと沈んでいく太陽。そんな中不意に城の庭に影を落とした人物がいた。
「向かえに来たよ、お姫様」
 どれほど長い時間、私は目を閉じていたのだろうか。それとも眠っていたのだろうか?
 お姫様はその光景を見て驚いた。
 赤、紅、朱。庭の草の緑色、花の鮮やかな色、そして塀の灰色。それ以外の赤。
 そしてその中に立つ白色の服を着た少年。
「……僕と一緒に来ないかい?」
いや、白色なのだろうか。赤に染まった白。白を消し去った赤。
 少年はお姫様に向かって手を伸ばした。
「……どうやって、ここに入ったのですか?」
消えるようなお姫様の声に少年はにっこり、と笑った。顔に付いた赤を拭うことなく。
「『こんな塀くらいかるい恋の翼で飛んでまいりました』」
(ウィリアム・シェクスピア作、戯曲「ロミオとジュリエット」より)
あなたを救うために、自分が愛したあなたを。
 少年はさらにお姫様に近づくとお姫様は数秒驚いたようだったがゆっくりと手を伸ばして、少年の手を取った。
「『その目に見られて私の心は二つに裂かれてしまった、半分はあなたのもの、残りの半分もあなたのもの』」
(ウィリアム・シェクスピア作、戯曲「ヴェニスの商人」より)

 私の世界、狭い世界など捨ててあなたの元に。
 例え、あなたが血に染まっていようが、私に光を与えてくれたあなたをいつまでも愛せますよ。