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僕の村は釣り日和2~バルサ50

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 僕は自分の部屋に戻ると、ランドセルにズングリムックリのルアーを仕舞った。そして早めに布団に潜った。目をつぶると東海林君の嬉しそうな顔が浮かんで見える。
(東海林君、きっと喜ぶぞ)
 その夜はぐっすりと眠れた。

 次の日の朝。
 僕は駆け足で学校へ向かった。まだ教室には誰も来ていなかったが、ソワソワしながら東海林君が来るのを待った。たまには待たされる気分を味わうのも悪くはないものである。
 みんながポツポツと顔を揃え始めると、東海林君がいつものショルダーバッグをぶら下げてやってきた。
「おはよう!」
 僕は元気一杯に東海林君に向かって声を掛けた。
「ああ、おはよう……」
 東海林君は僕の声にびっくりしたように、ちょっとすっとぼけた顔をして言った。
 僕は早速、ランドセルからあれを取り出した。もちろんズングリムックリのあのルアーだ。
「僕のお父さんから、君へのプレゼントだよ」
 すると眠たそうな顔をしていた東海林君の目が、大きく見開かれた。
「おおっ、バルサ50!」
「バルサ50って言うんだ? このルアー」
「もう生産中止になったクランクベイトの傑作だよ。本当にもらってもいいのか?」
「ああ、もちろん」
 東海林君が金塊にでも触るかのように、恐る恐る手を伸ばす。そしてズングリムックリのルアーをすくい上げた。
 指先で表面の傷を確かめるようになぞる。その時の東海林君の目がうっとりとしていて、何とも心地良さそうだ。
「きっとこのルアーでたくさんのバスを釣ったんだろうな。表面がバスの歯型でザラザラだ。これは勲章みたいなもんだぜ」
「お父さんと同じこと言ってら」
「ありがとうよ。大切にするよ」
 その時、僕と東海林君の前にヌッと人影が現れた。ガキ大将の高田君だ。
「何だよ。桑原のオヤジもブラックバスを釣るのかよ。じゃあ、お前のオヤジも悪者だな」
 高田君は僕たちを見下しながら、鼻で笑うように言い放った。
「何?」
 僕は立ち上がり、高田君につかみかかろうとした。机が倒れ、ガコーンと大きな音にクラス中の視線が一斉にこちらに集中する。
 しかし意外なことに僕を止めたのは東海林さんだった。
「やめろよ。ピーマンを相手にしても時間の無駄だぞ。疲れるだけだ」
 東海林君の腕は、僕と高田君の間にしっかりと割り込んでいる。