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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「初体験・佳恵編」 第二話

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第二話

「おはようございます。雄介です、昨日はお電話すみませんでした・・・帰りが遅くなっちゃいまして今日になりました」
「雄介さん、ゴメンなさいねお電話なんかして。実はね・・・昨日佳恵が何も言わずに出て行ったからすぐに帰って来ると思っていたのにあの時間になったでしょ?主人がすごく怒って問い詰めたら・・・あなたと逢っていたって言うもんだから言い争いになって・・・」
「はい・・・そうでしたか。言わずに出てきたんですね・・・知りませんでした」
「お付き合いをしている事を主人は知りませんでしたから、激しく叱り付けまして・・・佳恵が家を出て行ってしまったんです」
「えっ!家出をしたんですか?今は帰ってきていますか?」
「そうなの。仲良くしているお友達に電話したりしたんですけど・・・見つけられなくて、あなたが知っているんじゃないかと電話しました。まだ帰ってきてないんです。とても心配で・・・私は寝れませんでした。主人も言い過ぎたと反省はしているのですが心当たりはありませんか?」
「心当たりですか・・・特に思いつきません。麻衣さんは知らなかったですか?」
「最初に電話したのよ、でも知らないって言ってたの」
「心配ですね・・・そちらに探しに向かいます」
「いいえ、あなたのところに電話が掛かってくるかもしれないから待っていて欲しいの。かかってきたら雄介さんから帰ってきて欲しいと伝えて欲しいの」
「解りました。そうします。電話があったら俺が責任持って家に帰るように言いますから・・・すみません、こんな事になってなんと言ってよいのか・・・解りませんが」
「あなたの責任じゃないわよ。負担に感じないで頂戴。もっと佳恵のこと解ってあげればよかった・・・母親として失格ね」
「そんなふうに思わないで下さい。大丈夫ですよ、きっと戻ってきますから・・・佳恵さんは間違ったことをする子じゃないですから」
「そうね・・・子供の事もっと信じないといけないわよね・・・お母様にご心配掛けてすみませんと謝って置いてください。それでは電話切りますね」
「はい、どこにも出かけずに家に居ますから・・・」

電話を切って一時間ほど経ってベルが鳴った。
「はい、井上です」
「・・・」
「もしもし?どちらさまですか?」返事をしない相手に雄介はピンと来た。

「佳恵じゃないのか?俺だよ、雄介」
「・・・」
「どうした?何か言えよ。どこから掛けているんだ?」
「死にたい・・・」
「はあ?馬鹿な事言うんじゃない!正気かお前は?」
「もう家には帰りたくない・・・どこにも行くところがないから・・・死ぬ」
「何言ってるんだか・・・お前幾つだ?俺はどうなるんだ!そんなことしてみろ、許さないからな」
「雄介みたいに強くないから、私は・・・もうダメ・・・今までありがとう」
「解った。死なせてやるから・・・最後にもう一度だけ逢ってくれ。どこに居るんだ、すぐに行くから教えろ。親には内緒にするから」
「絶対に?」
「ああ、絶対にだ」
「おばあちゃんの家」
「おばあちゃんの家?どこそれ」
「三ノ宮」
「お前のお母さん電話しなかったのか?おばあちゃんのところに」
「掛かってきたよ。私が頼んで、いないって言うことにしてもらったの」
「なんで心配かけるんだ!母親だろう・・・そんなことしてどうなると思ったんだ?」
「お父さん、雄介のことなじったのよ・・・許せなかった、好きな人のこと悪く言うなんて」
「だからといってあんな夜に家出するなんてどうかしてるぞ!何かあったらどうするんだ。俺が心配するって言うこと考えなかったのか!」
「ゴメンなさい・・・怒らないで」そう言った後に泣き声が聞こえた。

「佳恵・・・」
電話の声が変わった。
「井上さんですね。祖母の文子です。ご迷惑をかけているようですね。息子の事許してやってください。父親として娘が可愛かったから叱ったんだと思います。私が強くもう二度と怒らないように言いますから、今までどおりに佳恵のこと大切にしてやって頂けませんか?」
「おばあちゃん。いえ、すみません、文子さん・・・俺は佳恵さんが怒られたことには同情しますが、家出したことはやりすぎだと思います。早く家に帰ってお父さんに謝って許してもらえるように伝えてください」
「おばあちゃんでいいのよ、雄介さん。私が着いて行くから心配しないで・・・佳恵に代わるから」
「佳恵、おばあちゃんとすぐに家に帰るんだぞ・・・二日の日に俺と逢う事をお父さんにも許してもらえ。お前のこと一番心配している人なんだから、話せば解ってくれるよ。出来るか?」
「うん・・・雄介ありがとう。わたしやっぱりどうかしてた・・・あの日はあなたのことしか頭になかったから、つい父親に言われたことに歯向かってしまったの。黙って聞き流していたら、何も知られずに終わったのにね」
「どうせいつかは知れることなんだから、良かったって思えよ。じゃあすぐ行くんだぞ・・・帰ってお父さんに話しが出来たら電話してくれ。待っているから、佳恵・・・傍に居てやれなくてゴメンな。大好きだよ・・・」
「雄介・・・いつも優しくしてくれてありがとう。私も大好き」

傍で話を聞いていた雄介の母は何とか納まった様子にホッとしていた。息子が随分成長したとふと思った。昨日まで子供だと思って見ていたが、なんとなく淋しさにも襲われた。自分よりそして家族より好きな人のほうが大切な存在に変わってゆくのだろうと、考えさせられた。子供の成長は喜びと同時に切なく感じるものであることを初めて知らされた。

佳恵は祖母の文子と一緒に帰ってきた。
「お義母さん!どうしてそこに居るって仰ってくださらなかったの?心配で眠れなかったんですよ!」
「優美子さん、あなたこそどうして佳恵が出て行くようなことをしたの!」
「貴雄さんが・・・強く言い聞かせていたら、急に走って出て行ってしまったから・・・どうすることも出来なかったんです」
佳恵の父親は貴雄、母親は優美子と言った。

「貴雄にそこまで怒らせるのをあなたが辞めさせないといけなかったんじゃなかったの?」
「それはそうですけど・・・あの人佳恵には厳しくしていましたから、事実を知らされて我慢出来なくなってしまったと思うんです」
「夫婦で話しが無いって事よ、違うの?子供の事は一番大切なことじゃないの?」
「お義母さん・・・」
「貴雄が帰ってきたら、あなたからちゃんと話してくださいよ。佳恵の味方になってあげてね、もう子供じゃないのよ一人の女性・・・解りましたか?」
「佳恵が出て行ってから貴雄さんと話し合いました。仕事中でも構わないから帰ってきたら会社に電話をしてくれと頼まれています。あの人の方が心配しているんですよ・・・」
「じゃあ、すぐに電話をして」
「はい」
母親が電話をしている間に文子は佳恵に、
「お父さんが帰ってきたらまずは心配かけたことを謝りなさいね、いい?」そう話した。
「うん、そうする。ねえ?おばあちゃん、お父さん許してくれるかなあ?」
「大丈夫だよ。佳恵のこと一番好きだから」
「本当?」
「子供ってそういうもんなんだよ。お前も結婚して子供が出来るとそう思うから・・・お父さんの気持ちだってよく解るよ」