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きのう・きょう・あした

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  今はもう、頭に残っているというよりも、胸の中に収まっているという感じに成ってしまってるな・・・)

 「今日の夕飯は何がいいの?」
 「そうだな、ふぐサシにステーキでも食うか?」
 「そればっかり、なんか他のこと言って、ちょうだい! もう、主婦は毎日の夕飯の献立を考えるのが
  大変なんだから・・・」
      
 (毎日、その場で考えるから大変なんじゃないか・・・あらかじめ一ヶ月単位で予定を決めておけば、
  楽だし食べさせられる我々も、似たような物が続いたりしなくて、助かるのに・・・)

 「また、ぶつぶつ、言って・・・今日はマーボー豆腐と餃子でいいわね」
 「よいよい、好きにしてくれ」

 (今は、夕飯のおかずのことを考えられる、状態じゃ無いわい!)

スーパーに行くときのいつもの会話をほぼ習慣のように繰り返しながら、まあ、それなりの材料を
買って来るのです。

 昼間、スーパーで買った材料で作ったマーボー豆腐と餃子が並んだ食卓に座り、くだんの徳利
から、ちびりちびりと晩酌をしながらも、やっぱし、あの歌のことを考えていました。

 (渡辺ともこさん・・・北九州在住のプロのミュージシャン? )

正彦と音楽の関わりは、大学時代にさかのぼります。高校時代にもビートルズの音楽を聴いて
友達同士レコードの借り合いをしたものです。ビートルズの最初の映画「ヤー!ヤー!ヤー!」
も見に行きました。でも、この頃は聴くだけで自分で楽器を演奏することはありません。かろうじて
国立の大学に入学して、下宿での一人暮らしの時間つぶしに、小倉の質屋さんで買ったガットギター
が、積極的な音楽とのかかわりの初めでした。大学で知り合った友達がマンドリンクラブに入っていた
ことと、キャンパスですれ違った可愛い子がマンドリンを抱えていたことが、正彦をマンドリンクラブに
入れるきっかけになりました。クラブに入った動機は不純かもしれませんが、その後はギターの練習が
大学に通う目的となりました。ギターに熱中するあまり4年で卒業できず1年多く大学に在籍すること
になりました。クラブに入るきっかけとなった彼女とは、これといった進展はないまま、いいお友達として
クラブ生活を送っています。

音楽をやる人は多分、最終的には曲作りに憧れます。いい詩に、いいメロディーを創って、いい
ハーモニーをつけて、いい曲を創ってみたい、という思いは強くありながら、無からメロディーを
創っていくことは誰にでも出来る物じゃないと、気づくのもそう遅くはありません。ようするに、いい
曲をつくるのは生まれつきの才能が必要であり、自分にはそれが無いと気づく訳です。正彦もまさに
そんな平凡な、音楽好きな青年だったわけです。
それだけに、すばらしいメロディーやハーモニーを創れる人に嫉妬にも似た憧れを感じるのです。

 「今回のNHKの大河ドラマ、途中からつまんなくなっちゃったなぁ・・」
 「でも、竹中直人の演技がいいという人もいるけどねぇ」
 「あんまり、歴史をめちゃめちゃにしてしまったら、単なるお笑いだよ」
 「あんたは、歴史にうるさいからそんなこと言うけど、普通の人はこんなんでいいの」
 「あっ!そう!」
 「がたがた、言わないで先に風呂はいったら?」
 「おっ、そうしよう」

今日ものんびりと湯舟に浸かっておこうという気はあるのだが、2、3分するとどうも落ち着かなく
なって、こんな所でじっとしていたら時間がもったいない、とかなんとか考えて、結局今日も10分
足らずで上がってしまった。

 (さて、いつも通りメールでも読むか・・・質問は、今日朝に出したんだけど、とてももう返事が
  来てるとは思えないけど・・・)

毎日の日課通り、パソコンの電源を入れ、最初に自分のホームページを見てまわり、ページに付け
ているアクセスカウンターの増加ぶりを調べていった。

 (う〜ん、やっぱし日曜日はアクセス数が少ないや・・・)

一通り見終わってから、メールのソフトを起動し新メールを取り込み始めました。

 (今日は午前中に1回、読み込んでいるから今は26件の新メールか・・・)

新しいメールが自分のパソコンに読み込まれる都度、日付と相手先メールの件名が表示されて
いきます。

 (ん?・・・)

新メールが入ってくる都度スクロールされる行のなかに、件名で「Re:きのう、きょう、あした」というのが、
目に入りました。差出人は、佐伯淳子さんという方です。

 (なにか、返事のメールが入っている・・・)

全ての新メールが読み込まれた後、普段なら先頭のメールから順に開封していくのですが今日ばかり
は、いきなり途中のその目的のメールを読むべくマウスをクリックしてメールの文章を画面に表示させた
のです。

  『佐伯淳子です。
   昨日は皆さんお疲れさまでした。
   記念すべき第一回の放送に立ち会えて、ワクワク、ドキドキ
   さて、今初めて自宅で放送を聞きました。
   「きのう、きょう、あした」が我が家のパソコンから流れ、
   思わず涙がこぼれてしまいました。

 (ん? この佐伯淳子さんて、誰なんだろう?・・・)

   この詩を書いた大石剛(たけし)さんと作曲、歌を担当する渡辺知子さんとの出会いは4年間
   の私の記者生活の中でもっとも印象深いものでした。

 (ん? 記者生活?・・・)

   この曲を、たくさんの人に知ってもらいたいとずっと思ってきましたが
   こうして又KISでたくさんの人に聞いてもらう事ができ、
   そしてこの曲に関する反応が早速メールで届いてるのを見て、
   今回KISの活動に参加できて本当にうれしいなと改めて実感しました。
  <中里さん>
   > ○北九州市の歌手「渡辺ともこ」さんってどんな方ですか?
   > ○あれを歌っているのはだれですか?
   > ○CDは出ているのですか(アルバム、シングル)?

 (おっ! わしのメールに対して返事を書いてくれているんだ)

   渡辺知子さんは北九州市在住のミュージシャンです。
   最年少でヤマハのエレクトーン世界大会で優勝した経歴を持っておられます。
   私は小さい頃小倉のデパートで彼女のミニコンサートをよく聞いていました。

 (へえ〜、エレクトーンの世界大会で優勝とはすごい人が北九州にいるんだ・・・)

   少女時代は難病と闘いながらエレクトーンに打ち込み、
   30歳代でクモ膜下出血に倒れましたが奇跡のカムバックを果たしました。

 (難病? え〜っ、クモ膜下出血!・・・)

   現在は、CDの制作や福祉施設での慰問コンサートなど、精力的に活動しています。

 (ふ〜ん、CDも出してるのか・・・)

   さて、渡辺さんと詩を書いた大石剛さんとの出会いは剛さんが出した
   1冊の詩集「風のように」がきっかけでした。
   剛さんは小学校低学年で双子の兄とともに筋ジストロフィーを発病。
   支えあってきた兄は6年前に亡くなりました。兄と同じ道をたどるのかという恐怖
   に絶望した剛さんは詩を書くことで自分を励ましてきました。