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死にたがりのコオロギ

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あるところに一人ぼっちの死にたがりのコオロギがいました
死にたがりのコオロギは毎日することもなく、家の中でただりりりりんと鳴いているばかりでした

日中も鳴いてばかりなのに、夜になってもコオロギは泣いてばかりでした
しかし鳴いている声も泣いている声もほかの虫にとっては区別がつきません
誰もコオロギが泣いていることに気付く人はいませんでした

コオロギは自分はだれにも好かれない駄目なコオロギだとおもっていました
しかし、コオロギの近くに住んでいる虫たちはコオロギの鳴き声を聞くたびに
「何といいい声なのだろう。この虫と友達になりたいわ」
と思っていました
コオロギは家からでないためだれかと友達になるきっかけもなかったのです
きっかけもないのに友達ができるはずはありませんよね
コオロギはそれに気がつきません

ある日死にたがりコオロギがいつものように死にたくてりりりりんと泣いていると、
それに共鳴するかのように外からもりりりりんと鳴き声が聞こえてきました
そっとねぐらから顔を出すとそこにはかわいらしい女コオロギがいました
死にたがりコオロギに気付いた女コオロギはにっこりとほほ笑んでまたりりりりんと一鳴きしました
友達もいなかったコオロギは少し嬉しくなりました

(そうだ、少し外に出てみよう)

コオロギは外の世界に足を踏み出しました

と、その時です

コオロギの体を大きな影が覆いました
次の瞬間コオロギは大きな影に踏みつぶされてしまったのです



「あー、今なんか踏んだかも」
「お前虫踏んでるわ」
「マジで?きもっ」



死にたがりのコオロギはやっと死ぬことができました
しかし彼は死ぬことができて幸せだったのでしょうか

死にたがりだからと言って家に泣いてばかりいなければ
コオロギはもっと早くに死ねていたのかもしれません
逆に、もっと早くに彼が生きることに楽しさを見つけられていたなら
もっと命を大事に毎日を生きていたのかもしれません

どちらが幸せだったのか、死にたがりのコオロギが本当に死ねて幸せだったのか
私たちにはわかりません
作品名:死にたがりのコオロギ 作家名:兎々