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僕の村は釣り日和1~転校生

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 その日はまだ夏の匂いが残っていた。
先生が夏休み中も掃除を欠かさなかったのだろう。木造の校舎の中は清潔に保たれていた。とは言っても古い建物だ。傷んだ箇所は目立つ。先生たちはそれを「学校の歴史と勲章だ」といつも言っていたっけ。
 僕は桑原健也。この玉置村に住み、玉置小学校に通う、ここいらでは平凡な六年生だ。唯一、みんなと違うことと言えば、ほとんどの子供たちが地元の農家の子供であるのに対し、僕の父親は隣の笹熊市にある会社まで通っていることくらいか。

 僕たち六年生にとって小学校最後の夏休みも終わり、教室の中はざわついていた。
都会の学校では小学校一年生から六年生までが違うクラス分けになっていると聞いたが、うちの小学校は何せのどかな山間の小学校だ。四年生から六年生までがひとつのクラスとなっている。
あらためて見てみると、夏休みの間、毎日のように遊んだ友達もいれば、久々にを話をするやつもいる。とはいっても狭い村の中だ。どこかでは顔を見ている。
「よう、元気か?」
「笹熊山でオオクワガタ採ったぞ」
「俺なんか二連滝ででっけえイワナ捕まえたもんね」
 みんな一斉にそれぞれが、夏休みの自慢話を始めだした。
 僕だって負けてはいない。山間のこの小さな村で、船に乗って海釣りに行ったのは僕くらいのものだろう。どうしても海釣りがしたくて、海辺の町に暮らす祖父の家まで泊まりに行き、父に連れて行ってもらったのだ。
 僕の祖父は海辺の町で、のんびりと釣りを楽しんだりして暮らしている。もともとはこの村の人なのだが、昔から「鉄砲玉」などと呼ばれ、よく遠くまで釣りに行ったりしていたっけ。
そんな祖父に船宿を紹介してもらい、船釣りをしたのだ。
 船長さんはイカツイ顔をした、いかにも怖そうな人だったけど、意外と優しかった。
 そんな船長さんの親切なアドバイスで僕はカサゴという魚を、見事にたくさん釣ることができたのである。もっとも魚を釣った時のあのドキドキと、船酔いの気持ち悪さが入り交じった複雑な楽しさだったが。
「僕だってカサゴを五十匹は釣ったぞ」
 僕も自慢げに友達に言った。五十匹というのいは大げさである。よく「釣りの話は手を縛ってしろ」と言うが、どうやら口も縛ったほうがよさそうだ。
「カサゴ? 何だそりゃ?」
「どんな魚だ? 食えるのか?」