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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「夢の続き」 第十一章 嫉妬

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第十一章 嫉妬


「洋子と恭子は?おばさん?」
「買い物に出かけて行ったよ。多分渋谷だと思うけど」
「そうなの・・・じゃあ俺とおばさんだけって言うこと?」
「そうよ、嫌なの?」
「そういう意味じゃないよ」
「お義父さんと何話していたの?靖国で」
「いろいろだよ。若い参拝客が多かったからびっくりした」
「そうなの。私は行ったことが無いから初めてそう聞いたわ」
「日本人の失われた何かがあるって感じたよ。おじいちゃんや多くの戦争犠牲者の人たちが持っていた精神っていうものかな」
「良く解らないけど、危険な響きが感じられるのは間違い?」
「間違っていないよ。だから戦争を始めてしまったんじゃない。もっと言うと、精神は尊いものだったけどそれをコントロールした奴が
いたって言うことかな。今の世の中もバブルで浮かれることに隠れて誰かが国民を騙す準備をしているかも知れないよ」
「そんな事まで貴史は考えられるのね・・・先生になれるわきっと」
「ありがとう。それよりおばさん・・・お母さんって言おうかな、構わない?」
「ええ、恥ずかしいけど呼んでくれていいわよ」
「お母さん、知っていて欲しいことがあるんだ。洋子には内緒にして欲しい」
「あら、何かしら。気になるわね」
「うん、恭子のことなんだけど」
「恭子のこと?なに?」
「どうやら告白されたらしいんだよ。親には内緒って言われたけど、お母さんなら親身になってくれると信じるから
話すよ。相手は高校生なんだ。俺の姉ちゃんみたいに悲しい思いをしないように守ってやって欲しい」
「恵子さんのように・・・そう、話してくれてありがとう。あの子は身体は大人だけど気持ちは幼いからバランスが保てないと
思うわ。それとなく話して、打ち明けてくれたらしっかり相談に乗ってあげたい」
「サンキュー、話してよかった。男と女は本当に好き同士になってから結ばれないといけないよね?お母さん」
「そうね、あなたたちみたいにでしょ?」
「お母さんとおじさんみたいにだよ、違った、お父さんみたいにだよ」
「まあ!そんなこと・・・」
「違うの?」
「解りません!恥ずかしいから聞かないで!」
「顔が赤いよ。正直なんだね・・・洋子と一緒だ」
「親子ですからね。似ているわよ。それよりどうするの、洋子たちが帰ってくるまで待っているの?」
「いや、帰るよ。明日学校だし、暗くなる前に家に着きたいから」
「じゃあ駅まで見送るわ」
「そんなことしなくていいよ。帰れなくなっちゃうから」
「どうして?」
「お母さんが好きだから」
「貴史・・・何と言うことを」
「本気に聞くなよ、ハハハ・・・おかしい。でも、お母さんとして大好きだよ本当に。お父さんと仲良くしてね、ずっと・・・」
「いつも冗談が過ぎるわよ!もう・・・困った人。洋子に言いつけるから・・・」
「辞めてよ!また学校でしかとされるから」
「お返しよ、じゃあね、送らないから」
「うん、バイバイ」

由美は後姿の貴史をいつまでも見つめていた。頭もいいし、身体もがっしりしているし、気立ても優しいし、意外に
純情なところがあるし、全てに理想の男性像に見えた。年齢が近かったら自分もきっと夢中になっていただろう。
洋子の気持ちが手に取るように解る、そんな自分になっていた。

洋子と恭子が買い物から帰ってきた。
「お母さん!貴史は?」
「いま帰って行ったばかりよ」
「なあんだ・・・プレゼント買ってきたのに、ねえ恭子」
「うん、お姉ちゃんと一緒におそろいのキーホルダー買ったのに」
「あら、そうだったの。洋子明日学校で渡したら?」
「そうね、でもなんか言われそうだから、貴史と逢って渡す」
「お兄ちゃん、また来てくれるかな、お母さん?」
「恭子が頼んでごらん」
「じゃあ、後で電話する」
「貴史は可愛い妹が出来て喜んでいるわよ、きっと」
「そう?可愛い?」
「ええ、とっても」

恭子は真っ直ぐで純真な中学生だった。
聞かされていた高校生の男子との付き合いも慎重に考えてやらないと、悲しい思いをする羽目になると由美は強く思った。
男女の事は親がとやかく言うことではないのかも知れないが、傷ついてからでは遅いと考えるのが親心である。
まして何も知らない中学生の恭子にとってこれから知る経験は甘いものになるか苦いものになるか、そして辛いものになるか
気持ちの持ちようで変わってくるように感じられた。

父親の勇介を東京駅まで送っていった修司が帰ってきた。
家族4人でいつものように夕飯を囲んだ。
「貴史がいないと寂しいな。なんかそう感じてしまうよ」修司は由美にそう言った。
「そうね、一人いるだけで賑やかですものね」
「一緒に暮らせるといいんだが・・・親御さんは許さないだろうね」
「あなた、それはダメですよ」
「解っているよ、そう思っただけだよ」
「お兄ちゃんと一緒に暮らしたい」恭子は修司に向かって呟いた。
「いま、無理だってお母さんが言っただろう」
「聞こえていたよ・・・」

「あなた、そんないい方しなくても。ごめんね恭子。お父さん怒って言ったんじゃないからね」
「ありがとう・・・気にしてないから」
洋子は黙って聞いていた。ひょっとして恭子は貴史のことが好きになっているんじゃないかと不安だった。
由美はそんな洋子の気持ちを悟ったように話題を変えた。

「私たち結婚してから貴史のご両親にご挨拶に伺ってなかったわね。貴史が取り持ってくれた縁だったのに忘れていたわ。
あなた、ご連絡して伺いましょうよ」
「そうだったな。大切なことを忘れていた。そうしよう」
「それとね、洋子のことお話して将来貴史との結婚を認めていただけるように話したいの」
「そうか、それは目出度い話だ。まだ早いけど、親同士が知っていることに越したことはないからな」
「ええ、そうなの。そのつもりで過ごして行きたいから」
「洋子、いいわね?」
「はい、私から貴史のご両親に話します」
「こういうことは相手のお父さんに修司さんが話すことなのよ。任せておきなさい」
「お父さんお願いします」
「解った。早速洋子から貴史に都合を聞いておいてくれないか?」
「日曜日がいいのよね?」
「そうだね」
「じゃあ電話する」

夕飯が済んで、洋子は電話を掛けに受話器を取った。恭子が隣に来て、後で代わってと言った。

「もしもし、佐々木ですが・・・はい、洋子です。貴史くんいますか?」
「洋子ちゃん、待ってて・・・貴史!洋子ちゃんから電話だよ」
「代わりました。洋子か、なんだ?」
「なんだはないでしょ、好きって言って!」
「バカか、今言えるわけないだろう」
「小さい声でいいから・・・早く!」
「もう・・・好きだよ」
隣にいる恭子に聞こえるように確かめた洋子だった。

「あのね、両親が貴史のご両親にご挨拶したいって言うのよ。都合どうかしら?」
「なんで?」
「結婚したのは貴史の口利きがあったから、そのお礼を言いたいって。それに・・・」
「ふ〜ん、それになんだ?」
「私を正式に紹介したいって」
「正式に?俺の親はもう知っているぜ、付き合っていることぐらい」
「そうなんだけど、その・・・将来結婚する約束をって言うらしいの」
「婚約か!高校生なのに?早過ぎないか」