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充溢 第一部 第二十一話

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第21話・1/5


 石造り、薄暗い部屋の中でポーシャ様と二人。
「説得には骨が折れました……これで、本当に見せ場がなかったら、相当怒りますよ、あの方」
 こちらが困っているというのに、笑ってばかりいる。
「怒りに任せて、お前を騎士団長にさせるとかな」
 あまり笑えない冗談。ここが騎士団の館だと分かっていて、際どい事を仰るのだ。
 ミランダ様が誘拐されたとき、フェルディナンドの懐に何者かが手紙を差し込んだ。スリのようにやられたものだから、彼は燃え上がった――その怒りにはほとほと手を焼いた。
 手紙の主は、ラッテンファンガーだった。要求は、誘拐したスィーナー様と引き替えに、私を連れてこいというものだ。彼は誘拐する人を間違えたのだ。
 私のことを気付いていたのだろうか? いずれにしても、何もなしでは、私の身柄を確保できないことは分かっているみたいだ。
「それにしても、拙速だな。あのネズミ捕りも。
 自分であの二人を焼き殺したと言っているようなものじゃないか。わざわざ鐘楼に招くとは」
 元修道院はこの短期間に立て直された。動員されたのは、ボロンナイトライド付近に寄りついていた傭兵連中だ。足が付かないように気を付けているみたいだ。
 要員を北方を廻らせて調べているけれど、まだ何も出てこないらしい。
 ポーシャ様は、ここで一つため息を吐き、悲しそうな顔で語り出す。
「無駄に長生きして、一個の特別な勢力を持っているつもりだったが……我々の知らない仕組みは沢山、それもずっと昔から世の中に蔓延っているのだ。
 残念ながら、現実の我々は世界に対してずっと無力で、小さな存在だ――済まない、ネリッサ」
 かぶりを振った。
「緊急時に苛立ちを隠せないのでは、儂もまだまだだな」
 この人の為だから戦える。
作品名:充溢 第一部 第二十一話 作家名: