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ウエツグ上次
ウエツグ上次
novelistID. 33611
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海原

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真っ黒な海に真っ白な線が、一本。どこまでも続いている。
僕は、その線を踏み外さぬよう
歩いていく。
一歩ずつ とぼとぼと。

半端な田舎の夜は 暗く静かだ。
聴こえるのは時々行き交う車の音と
僕の足音だけ。
足音はひとつも崩さず一定のリズムを敲いている。

点滅信号が奇妙に海原を揺らす。
僕の影が
点いたり、消えたり、点いたり、消えたり

足を止めることはできない

疲れが分からぬよう
海に落ちぬようリズムを刻む。


ふと空を見上げると、
同じような真っ黒な海が広がっている。
幾つかの点も泳いでいる。

しかしそこには道はない。

僕はここにある黒い海で十分だ。

不気味に魅かれるあの上の海に僕は行けない。





僕は、
真っ黒な海を渡る真っ白な線を歩く。
一定のリズムで。


いつかどこかに辿り着くため。
作品名:海原 作家名:ウエツグ上次