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南 総太郎
南 総太郎
novelistID. 32770
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『偽りの南十字星』 27

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『偽りの南十字星』 27

村田のジャカルタ訪問から半月ほど経過した或る日、飛んでもない
事件が発生した。

社長の村田と経理担当者が、ジャカルタ高等検察庁から出頭命令を
受けたのである。
インドネシア人ジャムティワン氏からの告発によるもので、容疑は、横領罪だと言う。
即ち、先般藤和東京本社から30億円がインドネシア・パイナップル社シンガポール
支社宛て送金された際、当時社長のインドネシア人ジャムティワン氏の承諾もなく
勝手に即日外部へ支払った事をさすという。

村田の交渉は失敗に終わり、かえって、事態を悪化させてしまったのか。

報告を受けた藤和本社はテンヤワンヤの大騒ぎとなった。
合弁会社の赤字問題ばかりか、遂に犯罪事件にまで発展してしまった。
正に泣きっ面に蜂だと。

知らせを受けた宗像も、横領罪とは妙だとは思うのだが、相手が相手、国が国ゆえ
理屈が通用するとも思えず、先行きを案ずるばかりである。

兎も角、二人はジャカルタへ飛び、弁護士を帯同、出頭した。

弁護士は、取引銀行のジャカルタ支店の優秀な顧問弁護士に加え、メダンでも有名な
女性弁護士を雇った。
更に、メダンの日本総領事館も積極的に応援を買って出てくれた。

こうして、完璧な弁護体制の下に高検による連日の尋問が開始されたのである。


                           続