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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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男って情けない

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妻の手術は8日の午後1時からの予定であった。
小さな個室に、家族全員が集まっていた。
私、長女、次女、長男。
長男は休暇を取った。
私は12時10分に病院に入った。昼休みの時間である。食事もしていない。
事前の説明で手術の時間は3時間が予定されていた。
私は仕事が忙しく、1時になったら工場に帰らなくてはならない。
まだ妻とは会話が出来た。
喉の周りのリンパを根こそぎ取るため、脂肪と一緒に取り出すとのことだ。
その際に顔の神経、舌の神経、声帯、腕の神経などに癌細胞があると、それらの神経に異常をきたす場合もあると説明された。
その話は妻と、長男と私の3人が聞いた。
妻もきっとその不安があるのだろうと思う。
1時の時間に1分ずつ部屋の秒針が進むたびに、誰の口数も少なくなった。
12時45分。引き戸がノックされた。
看護師が入って来た。
家族の誰もが心のなかで「がんばって」と願った。
「すみません。1時間ほど時間がずれ込みます。前の方の手術が長引いてます」
ホッとしたような、緊張感が切れた。
私は工場に戻らなくてはならない。
「後はよろしくな」
子供たちに当たり前のように言った。
「こんなときに何よ、仕事は何とかなるでしょう」
遠くに嫁いでいる次女に言われた。
「納期に間に合わなくなるから」
「仕事が大事だよ。後は任せて」
長男が言った。
「お前解って無いな」
次女。
「2人ともうるさいよ」
長女が言った。
「3時間目当てに都合付けてくるから」
私は部屋を出た。
警備の関係でドアはカードが無くては通行できない。そのカードは1枚だけであった。
長女が見送りに来た。
「早く来られたら来た方がいいよ」
ドアが閉まった。
作品名:男って情けない 作家名:吉葉ひろし