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夏風吹いて秋風の晴れ

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不思議な会話のあとに


「さぁ、顔にも似合わんようなことはおわりにしましょ。こないな事せんでも、直美はんは、そのまま、まっすぐ生きていきなはれ、そのままでよろしいがな。そしたら、いい事ありますわ。そりゃぁ、これから嫌なこともありますやろ、それも考えしだいでどうにもなりますがな。まぁ、とにかく、お似合いでっせ、綺麗に光ってますわぁ」
ステファンさんは、怪しい関西弁を流暢に直美に話しかけていた。
「ありがとうございます。いつも勝手ばかりで、ごめんなさい」
直美がいつもどおりにきちんと頭を下げていた。
「ほら、劉もちゃんとお礼いいなさいよぉー」
顔をこっちに向けてだった。
「あっ、すいません、なんか本格的で・・」
「あんさん、本格的って・・りっぱな教会で、わても、こう見えてもそこそこの神父ですがなぁ・・あいかわらずやなぁ、あんさん・・・ちーっとも、変わってないなぁ・・小さいころと。まぁ、そこもあんさんの ええとこよってな・・」
言い終えていつものように巨漢を揺らして大笑いだった。
「そうかなぁー」
ちょっと不服な顔をステファンさんに向けていた。
「ほれ、はよ、聖子さんとこ行きなはれや、さっき会ったら、あんさんらが来るって行って、うれしそうな顔してましたで。お昼作る言うて、さっさとミサの途中で抜け出しましたよって。はよ、いきなはれや」
「はぃ、ありがとうございました。今度、寄付しますから・・・」
「あほぅ、気持ち悪いよってやめてぇーやぁー。それになぁ うちは、あんさんに、めぐんでもらうほど、まだ、落ちぶれてませんよってな。そないなことより、あんさんには、庭の芝刈りでもしてもろたほうが、わても神さんも大喜びですよってな」
「はぃ、それなら いつでも・・・」
「よっしゃ、ほな、それ、今度でいいいから頼むわ・・なんやら、ここの若いのは、そういうの苦手がおおいですよってなぁー なぁー林はん?」
林さんを見ながらのステファンさんは 言葉とはうらはらに笑顔を浮かべていた。
それに林さんは笑顔を浮かべて恥ずかしそうにうなづいていた。
「まっ、後で行くかもしれんからよろしゅう、言うといてや、ほな後でな」
「はぃ、では、おじゃまします」
頭を下げると直美も続いて頭を深ぶかと下げて、
「わたしもいっしょに芝刈りしますね、約束します、ほんとにありがとうございました」
って元気な声だった。
その顔は、綺麗だったし、変な言い方かもしれなかったけど、素敵だった。

「ねえ、劉・・・」
大聖堂の大きな扉をぬけると、直美に話しかけられていた。
「なに?芝刈りの話?」
「ううん、違う。ちょっとおかしいと思われちゃうかもしれないけど、このネックレスね、さっき、光ったの。ビィィーって、うーん、表現むずかしなぁぁー でも、ね、光が線みたいに・・長―くね」
「なにそれ」
「あっ、やだなぁ、いいよぉ だってさぁー、ステファンさんにお祈りされてから、首に戻してから、すぐに見たらね、光が1本綺麗に、こう、ビィィイーって・・」
指でその線を描いているようだった。
それって、たまたま、聖堂の明かりのなにかが影響したような気がしたし、直美の瞳がもしかしたら少し濡れてたのかもってだった。でも、直美の言葉もなんとなく魅力的なことだった。それに、めったなことでは、そんなことは言わない子だった。ちょこっと信じてみた。
「そっかぁ、ふーん、そうなんだぁー 綺麗だったの?その光って・・」
「うん、細―くて、きらきらって周りがね」
「そっか、うん、いいね」
「うん、とってもよかった。また いつか見れるといいなぁ」
「また、いつか見えるんじゃない?」
「そうだと いいなぁー 今度見えたらすぐに言うね、劉も見えるといいなぁー」
「うん、そうだね、見えるといいね」
「うん」
返事をして、首を曲げてそのクロスのネックレスを直美は覗き込んでいた。
その顔はネックレスと一緒の輝いているようだった。
「あっ、弓子ちゃんだよね」
教会の門をでて道路から左手の叔母の家を向くと直美が、声をだしていた。
「おっ、そうみたい」
叔父の家の門の外にちょうど弓子ちゃんがキャップをかぶって立っているようだった。
「なにしてるのかなぁ?」
たしかに変な場所にたっていた。
「なんだろうね・・・」
「うん、でも、元気そうだね、よしぃ、弓子ちゃーーん」
大きな声で直美が前方の弓子ちゃんに向かって声をだしていた。右手を大きく上でふりながらだった。
その声は弓子ちゃんにとどいたらしく、
「こんにちわぁー」
って弓子ちゃんがこっちに向かって大きな声をだしていた。それは充分俺たち二人の耳に届く声だった。
それに答えて、直美はまた、右手を小さく振っていた。
「元気だね。うん、よかった」
「そうだね、それだけでいいね」
「うん、あれ、ホース持ってる?手に?そうだよね?劉?」
確かに蛇口からつないでいそうな水がでるホースを持っているようだった。
「そうみたいだなぁ・・水でも植木にでもまいてるのかなぁ・・」
「そうかなぁ・・」
話しながらだんだん、弓子ちゃんに近づいていた。

「あっ、車洗ってるんだ・・」
直美がうれしそうに俺にだった。
確かにもう一方の手にはブラシも見えてきていた。
天気もよかったけど、弓子ちゃんの格好は半ズボンにタンクトップだった。
元気な中学生そのものだった。

作品名:夏風吹いて秋風の晴れ 作家名:森脇劉生