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夏風吹いて秋風の晴れ

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大場が店で


「まっ、言っただけだから・・漠然とだから・・」
大場が、少しの沈黙を破って声を出していた。
「いそがずにやれや、時間あるだろ、まだ・・」
ごまかすつもりはなかったけど、あいまいな返事を返していた。
「うーん。まっ いいか・・・」
ちょうどお客様がドアを開けて、やってきたので、話を大場がまとめていた。
「こっちでいいか?大場・・・」
お客の目にはとどかい位置に大場と移動をだった。
すこしだけ、移動して、大声でなければ仕事のじゃまにはならない位置2人で座り直していた。
「明日あたり、久々に稲村ガ崎にいかないか?休みはいつなんだ?」
大場が、自分で買ってきた別のお土産のお菓子の箱を開けながら聞いていた。
「明日休みなんだけど、引越し手伝いなんだよ」
「へー 誰の?」
「誰って・・言われるとなんだけどさぁー」
「俺も知ってる奴?」
「引越し先は、叔父さんの家になんだけど・・・引っ越してくる人は大場は知らない人・・・」
「えっ?親戚とかが間借りとかするのか?あそこに?」
不思議そうな顔で大場に聞かれていた。
「娘来るんだよ、明日・・」
「えっー なんだそれぇー 叔父さん、隠し子いたのかぁー・・・・」
また、大きな声に大場が戻っていた。
「違うって、違うから・・」
あわてて、俺はもっと大きな声だった。
「だって、娘って・・・おかしいだろ」
「女の子を養女にするんだよ・・」
落ち着いた声で大場に説明をしていた。
「えぇー 知らなかった・・」
「去年の秋ぐらいから話はあったんだけどさ、お前に言う話でもないしな・・それに正式に決まったのは、つい最近なんだよ」
「しっかし、びっくりだわ」
大場が、椅子の背もたれに深く身を預けながらだった。
「だから、明日は休みだけど、手伝うから無理だなぁー 海・・行ってないからいきたいんだけど・・」
波にのらなくても、海の匂いをすこしだけ、肌で感じてみたい気分だった。
「俺も手伝おうか?」
また、体を前にして俺に近付きながら大場が聞いていた。
「うーん、荷物ないと思うんだよね・・引越しっていっても・・」
「そうかぁー で、どこから養女にくるの?親戚筋とかから?」
「いや、施設から・・・」
「へぇー そうなんだぁー 幼稚園ぐらいの子なの?」
「いや、中学生」
「うそぉー 中学生・・・・ビックリ」
大場の顔は、本当にびっくりって顔だった。
「いい子だよ、しっかりしてて、はっきりしてるし、ボーイッシュって感じかな・・」
「そうかぁー 中学生かぁー 見にいこうかなぁー」
「見に来るのかよ・・・」
大場らしい考えに思わず笑いながらだった。
「偶然にさ、ほら、隣のステファンさんの教会に行ったら、隣の家に柏倉を発見、それで、そのまま、お前とお隣の叔父さんの家に行くってどうよ?」
「どうよ?って言われても・・・」
「直美ちゃんも来るんだろ?」
「うん」
「じゃあさー どう考え立って、あれだろ、引越しが終ったら、宴会っていうかご馳走でたりするんだろ?それに、あの声のでっかいステファンさんなんかも、来ちゃったりするわけでしょ?もしかすると、若い神父さんとかもでしょ?そこに俺がいても、別にいいじゃん。うん。ぜんぜんおかしくねーや」
勝手に自分でストーリーを大場がつくって、自分で納得していた。
「まぁ そうかもしれないけど・・お前、暇なわけ?」
「あっー そういう言い方ってよくねーだろ、、まっ 暇だけどさ・・教会にも行ってないし・・いいんじゃないかぁー」
「行ってないって・・いつも、行ってないだろ・・」
「あれ、夏樹がいたころは、たまに行ってたぞ、近くを車で通った時は・・」
本当かよって思っていた。
「ふーん、そうかぁ?」
「そうだってば。良し、昼ごろでいいか?あした?」
大場は勝手にもう決まりって感じだった。
「来るなって言っても、お前来るだろ?」
「なんでよー いいじゃん」
「まー どうせ来ちゃうんだろうから仕方ないけど、あんまりにぎやかにすんなよな。一応さぁー 彼女も緊張するだろうしさ、叔母さんとかもだからさ・・」
「そんぐらいわかるって・・馬鹿じゃねーんだから」
語尾を小さくしながらだった。

「主任、物件案内なんですけど、私が入っていいですか?」
川田さんが、席を立ってこっちに来て俺に話しかけていた。お客様はさっきから来ていた若い女の子だった。
「あっ、場所どこですか?」
「線路の向こうの、コンビニの上の物件です」
駅の反対側の、駅から歩いて7分ぐらいの5階建てのマンションの事だった。
「じゃぁー すいません、お願いします」
「はぃ、行ってきます」
うちの物件だったから、川田さんは鍵をとると、お客様とそのまま外に向かっていた。
たぶん40分は帰ってこないかなーって思っていた。
「けっこう 儲かってるのか?主任さん?」
大場が、ふざけながら聞いてきていた。
「まぁー そこそこだわ」
「ほうー」
「お前さぁー 人いないからさ、そこのカウンターに座って、仕事しない?」
「おつ、いいねー 何するの?」
「これを、こっちのファイルに入れるのよ。それだけ」
「うーん、単純だな・・」
「じゃぁー これ、全部な・・金額ごとに別れてるだろ、ま、わかるか?頼むわ」
「簡単じゃん」
簡単だけど面倒な仕事だったので、こっちは、よかったぁーだった。
「じゃぁ、これ全部ね・・」
カウンターに座った大場の前に紙の把を置いていた。全部物件案内の紙だった。で、お客きたら、説明もする?おもしろいかもよ?」
「いいのか・・やるやる。若くて綺麗なおねーさんでも来ないかなぁー 」
「そう、うまくは いかないかもよ」
「いや、きっと来る」
妙に自身まんまんだった。
「うわぁー マジ来た」
大場が声を出したから、あわてて建物の外を見ると、たしかに外から見えるようになっていた物件の案内一覧を一生懸命見ている若い女の子が1人立っていた。
入ってきても、大場にまかせようって、なんだかこっちも楽しんでいた。
「大場たのむわ、まとまったらバイト代だすわ」
「よーし、決めますよー」
元気な大場が、真っ黒な顔から白い歯を出してうれしそうだった。
俺は、自分の席に戻って、高みの見物を気取ろうかだった

作品名:夏風吹いて秋風の晴れ 作家名:森脇劉生