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空想

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妖怪とか、おばけとか
そんなたぐいの
生き物がいてくれれば


ずっとよかった。



教室内できらきらとしゃべる彼女たちは、とても普通だ。

それがあまりにも普通で、でも

わたしにとってそれはまったく当り前では無くて

かなしく、なった。


いっそのこと、私が人間じゃないものなら、開き直れたのに。





「…それ、なに?」


かけられた声にしばらく反応できなかった。

「…本。」

そう答えた私のなんと無愛想なことか。





「だから、なんの?」

ほんの少し苛立ちを込めた声が降ってきたことに驚いて顔をあげた。

そのまま、無視されるだろうと思ったのに




「妖怪とか、伝説とか、そんなの。」
再びぶっきらぼうに答えた私の回答に彼女はへえ、と感心した様子で私の手からその本を奪った。



「うわ、なにこれ、すっご。

こんなのいるの、へえー、よく考えるもんだねー、ホント。」

本から顔を離したり、逆に近づけたりしながら感心したように話す彼女。


「…、」

なんともコメントのしがたいその素振りにしばし黙って彼女を眺めていた。


そして、不意に彼女はこちらを見て




「なんかさ、あんたも妖怪みたいだよね。」



といった。


なんか黙ってて、今にも透明になっちゃいそうで、妖怪みたい、と彼女はつづけた。
















妖怪や、お化けだったら、なんと楽だっただろうか。


妖怪やお化けのように、彼女らとは隔絶された別の存在であればなんと楽だったろうか。



わたしは、人間だ。

どんなに頑張っても人間だ。




どれだけそういうものを空想して

そういうものに憧れて

そういうものの存在を信じたって

私はどこまでも人間で、それに変わりはないのだ。






ほんとうに


妖怪とか、おばけとか
そんなたぐいの
生き物がいてくれれば


ずっと



ずっとよかった。
作品名:空想 作家名:天屋