小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

「夢の続き」 第一章 修学旅行

INDEX|1ページ/6ページ|

次のページ
 
第一章 修学旅行ときっかけ



東京駅の新幹線乗り場の前でこれから修学旅行に出かける高校生の団体が集まっていた。駅員の指示で通勤客の邪魔にならないように、整列して改札を待っていた。

「なあ、どうして広島なんだ俺たちって?」
「片山、そんな事知るか!文句言っても始まらねえだろう」
「文句なんか言ってないよ。沖縄とか、北海道とかの方が良かったなあって思ったんだよ」
「そりゃそうだろうけど、お前広島って行った事無いだろう?」
「お前はあるのか?」
「小学校の頃は父親の転勤で大阪にいたから、一度だけ親と旅行に行ったことがあるんだ。原爆記念館に入ったけどよく覚えてない。まあ、興味なかったしね」
「そうだよな。戦争なんて何がなんだか俺たちには解んないし、興味も沸かないだろうしな」
「そうそう、それより広島焼きだろう!勉強よりも食い気だし」
「それも言うなら、色気より食い気だろう」
「お前はそうなのか?クラスに誰か好きな奴でもいるのか?」
「そんな意味で言ったんじゃないよ」
「赤くなってないか?誰だ、言ってみろよ。広島で結ばれちゃうなんて・・・ありかも」
「それ以上言うと怒るからな!お前こそ誰かいるんじゃないのか?」
「俺はお前と違って言うぞ。まあ、人気ナンバーワンだから敵が多いけど、栗山洋子狙ってるんだ」
「はあ?お前が洋子を?」
「洋子?親しく言うなあ。貴史も好きなのか?」
「俺は小学校の時からずっと同じに来たんだ。仲がいいなんて通り越してるよ」
「そうだったのか・・・なんだか羨ましいな。それなら口聞いてくれよ」
「嫌だね。だいたい洋子はお前なんか趣味じゃないよ。冷たい事言うけど。なんていうのかなあ・・・年上で無いとダメだよきっと・・・ほら父親居ないだろう、頼れる男性に憧れているんだ」
「ちぇっ!感じ悪いなあ。俺は諦めないぜ。貴史は誰なんだ?」

そう聞かれて、実は自分も洋子が好きだとは言えなかった。確かに仲が良すぎて恋人になるなんて考えられなかった存在だったが、自分に正直に考えると貴史は栗山洋子が好きだと思い始めていた。

「これから新幹線に搭乗します。列を乱さないで先頭についてホームに上がって下さい」係員の指示が出て、皆は引率の教師について改札を通ってホームに上がった。200名が三車両貸切状態で博多行き臨時ひかり号は出発をした。

修学旅行生が乗車している車両には車内販売が来なかった。売店のある車両まで貴史はコーヒーを買いに行った。すでに数人が並んでいた。その中に洋子がいた。

「洋子、お前もコーヒーか?」
「貴史くん!そうなの。どこの車両?」
「ああ、6号車だよ」
「私は8号車よ」
「離れているな・・・どうだこっちに来ないか?コーヒー買ったら」
「先生に怒られない?」
「大丈夫だよ。広島までどこに居たって構わないさ」
「そうね、久しぶりに話したいしね」

二人でコーヒーを買って貴史のクラスが居る6号車に洋子が着いてきた。通路を歩く洋子の姿を見て少しざわつく。それもそのはずだ、顔もスタイルも抜群だったからだ。

「貴史、お前・・・」
さっきまで話していたクラスメートの安田が口をあんぐりと開けて見ていた。
「情けない顔をするなよ。かっこ悪いぞ」
そう言われて我に返った安田は席に座った。その横に貴史が座って、向かい合わせにしていた前の席の一人に手を合わせて席を譲るように頼んだ。

「すまないな、恩に着るよ」そう言って、空いた席に洋子を座らせた。
「紹介するよ、栗山洋子。隣は一番の友達安田だ」
「安田です。よろしく」
「栗山です。貴史くんとは小学校からずっと同じ学校だったの。家も近所だし、こんなことってあるのね。不思議だわ」
「おれのこと知ってました?」
「見たことがあるぐらい、ゴメンなさい」
「いいよ謝らなくて。それより、広島へは初めて?」
「うん、楽しみにしてるの。宮島にある厳島神社の鳥居や、秋芳洞の鍾乳洞なんか。貴史くんは何が見たい?」
「おれか・・・とりあえずは原爆記念館かな」
「へえ〜戦争に興味があるのね」
「特にって言うほどじゃないけど、やっぱり広島に来たら見てみたいって思うよ。外人観光客はその目的が広島だって言う人多いらしいから」
「でも、私は怖くてなんだか観れないような気がする。悲惨な光景らしいっていうよ。展示が」
「現実を見るということが大切なんだよね。辛くてもそれが勉強なんだよ」
「貴史!おまえ、広島なんか行きたくないって言ってたのに、なんだその変わりようは?」
「せっかく行くのだから、しっかりと観ておこうと思っているだけさ」

列車はそうこうしているうちに、広島駅に到着した。

広島駅に降りた貴史たち修学旅行生は二班に分かれて先に原爆記念館へ向かうグループと宮島に向かうグループに分かれた。駅前に停まっていた観光バス6台に乗り込み、貴史たちは先に原爆記念館へと向かった。

昭和63年5月下旬の広島は好天に恵まれた。記念公園では花束をささげる人も見かけられた。外国人観光客も多く、特にブロンドヘアーの男女が目に付く。サングラスを掛けた婦人の姿は印象的で、ラフな姿と強い紫外線から目を守るサングラスではあったがちょっと不良っぽい印象を与える雰囲気にこの場所が厳粛な記念館であることを忘れさせてしまう。

展示館を出てきた生徒たちの顔色はさまざまだった。女生徒はとくに顔色を悪くしている者が目立った。洋子もその一人だった。安田は特に表情を変えることなく貴史にどうだったと尋ねた。

「地獄絵図だね・・・言うことなんか無いよ」
「でも、アメリカ人たちは原爆のおかげで日本は降伏してより犠牲者を出さずに済んだと思っているんだろう?」
「そう聞かされたから信じているんだと思うよ」
「じゃあ、原爆の使用は戦争を終わらせると言う目的じゃなかったと言いたいのか?」
「解らないよ、安田。いずれにしても、俺には哀しいことしか感じられないよ。戦争は決してあってはいけないと言うことだけは解るけど」
「俺もそうだ。ここの展示館の意味はそう皆が思ってくれることなんだろうなあ」
「安田、いい事言うな。核爆弾の脅威がなくなったわけじゃないけど、使うとこうなると言ういい教訓が世界に伝わるといいな。それが広島・長崎の使命かも知れないな」
「使命・・・言葉が悪いけど、俺には悲鳴に聞こえる」
「戦争のこと何も知らない俺たちが世界に向けて平和を唱えることなんて出来ないんじゃないのか?」
「だから、悲鳴なんだよ。やめて!としか言いようが無いんだよ。こうして、ああして、こうなるから・・・そういうふうには言えないよな、貴史」
「言えるようにならないといけないのかも知れない。すでに風化を始めつつあるような気がする」
「俺もだ。親に聞いても知らないだろうし、お爺ちゃんも死んじゃったしな」
「俺はまだお婆ちゃんが元気で暮らしているんだ。帰ったら尋ねて聞いてみるよ。ちょっと関心が出てきたから」
「ああ、頑張れよ。俺は・・・栗山に頑張るから」
「バカだなあ、安田は・・・ハハハ」

鍾乳洞の見学を終えて市内の宿泊先に貴史たちは着いた。夕食までの自由時間に安田は洋子を誘おうとロビーや廊下をうろうろとしていた。