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てっしゅう
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「神のいたずら」 第十一章 運命の前夜

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第十一章 運命の前夜


4月28日の夜、碧は弥生の部屋を訪ねた。
「お姉ちゃん、入っていい?」
「碧いいよ」
「明日って家に居るの?」
「午前中はね。昼から出かけるけどそれが何か?」
「うん、明日3時に貴樹さんが来るの」
「知ってるわよ。それで何?」
「パパもママもお姉ちゃんもいないとなると、私と二人きりになるじゃない・・・心配なの」
「あなた約束したんじゃないの?この次は断らないって」
「そうだけど・・・なんだか怖いの」
「あらあら・・・不思議ね、あんなに興味があったことなのに。どうしたの?」
「ねえ教えて・・・男の人のが中に入ってくるわけでしょ?お姉ちゃん怖くなかったの?」
「何を聞くのかと思えば、そんなこと・・・自然になるようになるわよ」
「だって・・・無理だよ。碧のまだ小さいもの・・・」
「変な事いうのね、相変わらず。そりゃ興奮してないし濡れてないからそう思うだけよ。知らないの?」
「・・・自分の身体のことが良く解からない、前にも言ったけど。自分で見たけど、絶対に無理だって・・・そう思ったら怖くなった」
「碧、お姉ちゃんだって同じだったよ。俊一さんの見て、無理って思ったもの。でもね、時間かけて自然に接していたらなるようになったの。碧も同じよ。心配要らないから・・・そうだ、これあげるよ」
弥生は引き出しの奥から箱に入ったスキンを一つ手渡した。

「お姉ちゃん家に持っていたの・・・凄い」
「あんたに必要だと思ったからね」
「ほんとうに?ウソでしょ」
「それもあった事は確かよ。あらゴメン一つじゃ足りなかったわね・・・3個ぐらいあげようか?」
「要りません!」
「怒らないでよ。親切に言ってあげているんだから」

碧はうつむいて泣き出した。弥生は碧が変わったと感じた。弱気になっているようで信じられなかった。
「お姉ちゃん言いすぎたね、ゴメンね。怖くないから・・・イヤだったらイヤって貴樹くんに言えばいいんだから」
「この頃急に身体が変化してきて、碧じゃないみたいに感じるの。そのことの不安もあって気持ちが変になっちゃったの」
「そう・・・バランスがとれないんだね、きっと・・・恥ずかしさが大きくなってきたのよ。男の人に身体見せるって、勇気要るものね。明日は無理しないことね。良く話し合えば?」
「うん・・・そうする。ありがとう、お姉ちゃん」

碧はこの夜寝れなかった。

朝方に少し眠気が来て起きたのは9時を回っていた。熱いシャワーで眠気を断ち切り自分の部屋を片付け始めた。出かけようとした弥生に声を掛けられ、居間で少し話をした。

「碧、お姉ちゃんはねあんたが無理をすることは無いって思うよ。約束したからと言ってこだわることは無いの。それより永く仲良く貴樹くんと付き合って行けたほうがいいと思うから。言い寄られても、先延ばしにすればいいよ」
「そうだね。お姉ちゃん、ありがとう。大丈夫だよ・・・」
「じゃあ出かけるから、留守頼むね」
「行ってらっしゃい!」

気持が何となく落ち着いてきた碧は家に鍵を掛けて少し散歩に出た。お天気もよく、ゴールデンウィークがスタートしたことで人影も少なくゆっくりと歩けた。駅前まで来てコンビニを覗いたら、先輩が居た。そう言えば貴樹と同じ年なんだと気付いた。碧に気付いて中から出てきた先輩は、近づいてきて、
「碧ちゃん、おれもう直ぐ休憩なんだ。ねえお茶付き合ってくれよ。奢るからさ」
「えっ?先輩とですか・・・」
「いいじゃないか。ちょっとだけだからさ。制服着てるし、怪しくないだろう?」
「そうですが・・・」
「じゃあここで待ってて」
そう言って中に入り、5分ほどで現れた。

「待たせたね・・・通りの向こうのファミレスに行こう」

何故か断れなくて碧は着いて行った。彼が来る日だと言うのに。

「どうした?なんだか元気ないなあ。まだ怒ってるのか?」
「いいえ、違うんです。先輩は今は普通にしているから平気です」
「平気か!そうか、良かった。何でも話せよ、お前の役に立ちたいって思うからさ。あんなことして本当に反省しているんだ」
「ありがとう・・・」

碧は言ってしまおうか悩んだ。同じ年の男性に聞くことは貴樹の気持を知ることに近いと思ったからだ。

「絶対に誰にも言わないって約束してくれますか?だったら相談したいことがあります」
「言わないよ。俺は口とあそこは固いんだ」
「何言ってるんですか!なんだか信用できません・・・」
「すまん、口が滑った・・・おまえそういえばまだ中三だったな。わるいわるい・・・」
「子供扱いですか?今度は」
「なんか不機嫌だな・・・そんな怖い顔をしていると台無しになるよ。可愛いのに。大丈夫だから、話せよ」

碧は貴樹との付き合いを出会いから今日に至るまで話した。

「そうか・・・そういう約束したのか。そいつは絶対に期待して来るな今日は。俺はそいつとは違うと思うけど、もし碧ちゃんが好きだったら、嫌がられてまでもしないぜ。それに・・・言っちゃうけど、最後までしないほうがまた逢いたいって思わせるからいいんじゃないの。じらすって言うのも恋愛のテクニックだぜ」
「テクニック?先輩もそうされたの」
「俺は・・・硬派だから、いやだったから、まだ経験はないんだ。でも、そう思えるから話した。無理はすんなよな」
「うん、話してよかった。自分の気持ちに素直に従う。嫌だったら嫌って言うから」
「そうだよ。まあ、嫌われたら、そいつと別れて俺と付き合ってくれよ。大事にするぜ」
「先輩!冗談言って・・・」
「ウソじゃないぜ。俺こんなんだけど、好きになった人は絶対に幸せにするぜ。どんな仕事しても頑張れる自信があるから」

休憩時間が済んで先輩は帰っていった。
碧は話してよかったと思っていた。そして力強く、「好きになった人は絶対に幸せにする」と言った言葉が耳から離れなかった。家に戻る途中その言葉は碧の頭の中で繰り返し繰り返し出てきた。

玄関のチャイムが鳴った。貴樹がやってきた。
「来たよ。上がっていい?」
「うん、入って。私一人だから気を遣わなくていいよ」

貴樹はきょろきょろと見回してから、碧に近づき抱き寄せた。

「まだいや・・・来たばかりなのに」
「いいじゃないか。今日は約束守ってくれるんだろう?」
「そんなことばかり考えていたの?」
「碧ちゃんだってそうしたいんだろう?違うのかい」
「貴樹さんは本当に碧のことが好きなの?」
「何でそんなこと聞くの?解ってるじゃないか」
「だって、身体のことしか言わないんだもん」
「好きって言えばいいのかい?だったら好きだよ、大好きだから。ねえ・・・碧ちゃんの部屋に行こうよ」

さすがにそう言われては気分が滅入った。
「今日はイヤ。碧出来ない日になっちゃったから・・・」とっさにそう考えて返事した。
「本当?解ってたなら先に言ってよ・・・期待してきたのに」
「何?その言い方は・・・お話して、楽しく過ごせばいいじゃん」
「話はこの前の花見で十分したじゃない。今日のことはずっと楽しみにして勉強も頑張ってきたのに・・・裏切られた思いがするよ」
「碧も裏切られた気持がする」
「俺は裏切ってないだろう?何勘違いしてるんだよ」