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5.サクラ(11/10) :先生


「先生に手伝ってほしいことがあるのだ!」
 友人の少年にそんなことを言われ、彼の家に向かった僕は、そこで恐ろしい物を見た。
「……これって…まさか…」
「さぁ先生!早速ここに寝てほしいのだ!」
「…いやいやいやちょっと待って。まずいろいろ質問させて」
「?」
「これは?」
「ベッド」
「これは?」
「箱」
「これは?」
「丸ノコ」
「…本物?」
「本物。」
「……つまり、これって?」
「えーちゃん自作の人体切断マジックマシーンなのだ!」
「うわああやっぱりいい…」
 がっくりと膝を落とす僕の顔を不思議そうに覗き込んでくるえーちゃん。
「どうしたのだ?」
「えーちゃん…どこでこれ見たの?」
「テレビでやってたのだ。お客さんの女の人がお腹切られててびっくりしたのだ。でもすぐに元に戻ってたのだ。すごかったのだ!だからボクもやってみたくなったのだ」
「その女の人、サクラって言ってマジシャンの仲間の人だからね…じゃなくて。えーちゃんさ…タネとか仕掛けって当然知らないよね…」
「なんなのだそれは?」
 この子は他のもっと難しいことは知っているのにこういう単純なことは知らなかったりする。
 そして、この子を説得するのは相当に難しい、ということは僕でも知っている。
「あのね。電気がないと丸ノコが回らないみたいに、手品っていうのは仕掛けがないと成立しないんだよ。人間のお腹切ったら死んじゃうのは知ってるでしょ?」
「でもテレビで見た女の人はフツーに立ち上がってたのだ?あの人は人間じゃないのだ?」
「いや、人間だと思うけど…」
「じゃあ先生でも大丈夫なのだ!」
「だからそれは仕掛けがあるからなんだって!女の人はそもそもお腹切られてないの!」
「ふーん…でも先生ならきっと大丈夫なのだ♪」
「大丈夫じゃないっ!どこからくるのその自信は!先生はえーちゃんとは違って人間なんだから、仕掛けのない丸ノコで腹切られたら死ぬから!」
「じゃあこの機会に先生もサイボーグになればいいのだ!」
「だから何度も言ってるように、俺は生身でいたいの!」
「えー…」
「…わかったじゃあもっと簡単でみんなが驚く手品教えてあげるから。最初からこんなに難しいのじゃなくて、そういうのから始めよ。ね。」
 僕はえーちゃんの興味を人体切断からそらすために小さな手品を見せることにした。
 だが…このときの僕がなぜこの手品を選んだのか、今でも正直理解できない。
 たぶん、すごいテンパってたんだと思う。
「これ親指。ね」
「うん」
「こうやって持つでしょ」
「うん」
「こうすると…ほら、指が離れた」
「…!!!」
 このときのえーちゃんの表情をみてやっと、自分がありえないくらい馬鹿な事をしたことに気づいた。
「ち、ちょっと待ってえーちゃんこれはちg」
「すごいのだー!!先生やっぱりサイボーグだったのだー!!!」
「違うからっ!ほらっ指ちゃんとついてるしっ!!」
「しかも自分で戻せるのだー!!!」
「それはえーちゃんもそうじゃないか、ってそうじゃないいいいいい!!!」
「先生ーーーーーーー!!!」
「う、うわああああああああああ!!!」
 その後、僕がサイボーグ並みのスピードで町内を三週し、自宅のベッドに尻尾を巻いて逃げ帰るまで、この恐怖の追いかけっこは終わらなかった。