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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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マリへの手紙

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マリへの手紙


何も書いてない便箋に文字を書こう

電話なら「マリ」の声が聞こえるけれど

パソコンでのメールなら早くていいけれど

このぼくの文字を読んで貰いたいから

そしてゆっくり「マリ」の返事を待ちたいから


6月の暑い日だ

私には夫がいます

ぼくには妻がいます

それはお互い想像していた


何時からなのか

「マリ」の言葉が

ぼくの心の中に鉛の活字となり沈み始めたのは

「マリ」の言葉は僕の心に刻まれ

消えることは出来なくなっていた


「マリ」の肌に触れた事もないのに

「マリ」からの手紙は肌のように感じられた

小さな染みが便箋にあるよ

6月なのに

雪の結晶のような涙だね


何時になっても

「さよなら」

の文字は書けないね

ぼくは白い便箋を封筒に入れたから

「マリ」

君が書いてくれないか


作品名:マリへの手紙 作家名:吉葉ひろし