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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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雁鍋

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私が若い頃の話をしてみよう。まだ20代後半の時である。
宝石画と言う工芸品を販売していた。
宝石と言っても、瑪瑙、水晶、トラ目石、オパールと言った安価なものである。
それらを使って、チャボ、孔雀、梅の花、バラなどを描いたものであった。
当時は物品税があって、贅沢品には税がかけられた。
この宝石画は15000円からである.確かではないが10パーセントくらいかと記憶している。これらは山梨の甲府で作られていた。
私は栃木なので仕入れに1日かかる。それらの品物は額装されて5000円くらいで仕入れる事が出来た。
販売先は官庁が主であった。学校、警察、郵便局等である。
これらは月賦販売しても安心できるからであった。
販売価格は15000円にしてあった。物品税の関係であった。
同じ品物でも宿代がない時などは、現金なら10000円で売ったりした。
当時の宿代は4~5000円位であった。また同じものを20000円で売る事もあった。
税金の関係で見入りは18000円になってしまう。
当時の学校の校長で給料は10万円位だと記憶している。
1万5000円で5枚も売れば、粗利は5万円である。
青森県の大鰐町に行った時のことである。
郵便局で商売を始めた。
「これいくらまでまかる」
1万5000円の品物であった。
「現金でしたら2000円値引きます」
「もうちょっと」
無論ここは駆け引きである。売らなくてはならない。
「他の方には内緒ですよ」
そう言って他の客の販売伝票を見せる。
無論割賦販売のものだ。
「特別1500円引きます」
「じゃ買う」
「他の方には内緒ですよ」
実際は他の人にも売ってしまうのである。
「この近くで良い宿はありますか?」
「大鰐温泉がいい、そして雁鍋頼むといい」
私は紹介された大鰐温泉に泊ることにした。
調度今頃の季節で10月とはいえ、関東とは違い寒さを感じた。
午後の5時を過ぎていたためもう暗い。杉山を両脇にくねくねと道は曲がっていた。
ライトに杉が浮かぶ。
宿に着き、私は直ぐに雁鍋を注文した。
風呂に入り食事を待った。
食事が運び終わった頃
「こんばんわ」
と芸者さんが入って来た。
私は驚き
「他の部屋では」
と言った。
「雁鍋頼んだでしょうが・・」
と芸者さんは言った。
「頼みましたが・・・」
「雁鍋は私たちの事ですがね」
「え、」
私は驚いた。初めての経験であった。
多少の金も持っていたので断る事も出来ず、弱い酒を飲んだ。
「芸者さんの事どうしてそんな風に言うの」
「少し昔の事らしいけど、風呂帰り1列に芸差が歩いて行くんですって、それが雁の飛んでいるように見えたらしい」
「そうなんだ」
「玉代は負けるから明日の朝までいい」
私はべろんべろんに酔っていた。
朝目が覚めると隣におしろいの香りがする女がいた。
がんがんする頭で何を考えていたのか、まだ食べ残したものがあると気が付いた。私は女の柔肌に触れた。
結婚して初めての事であった。
10月も終わろうとしていた寒い北国での経験であった。
玉代の他にわずかな金を渡した。
蒲団の脇に脱いであった下着が余りにも粗末であったのだ。



作品名:雁鍋 作家名:吉葉ひろし