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常に正しく在りたくとも 心の底に澱は積もる

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『酒』



程良く飲めば心のお薬、古くから百薬の長として、またコミュニケーションアイテムとして嗜まれているお酒。けれど、逃避に利用すればやがては心と体を蝕む悪魔の飲み物。他にも、調味料、睡眠剤、消毒に、燃料と、様々な側面を持つ不思議な液体。

大人になれば法的には飲める…はずなのに、残念ながら私は体質的に飲めない。
両親ともほとんど飲めない。
そもそも弱いので滅多に飲まず、どのくらいなのかは判断がつかないが、量を飲めない、すぐに赤くなるのは事実。
でも、両方からその遺伝子を見事に受け継ぎ、合体させた私は更に完璧だ。

だからなのかは分からないけど、私には飲酒に対する憧れがある。
飲める人は格好良い。
ビジュアル的な面で、そういうイメージを持っている。
あるいはテレビや映画なんかの影響なのかもしれない。


高校の文化祭でやっていた、アルコールパッチテスト。
「あー弱いね。」
あっさりとそう診断を下され、やっぱりか…と、少しばかり落胆した。

それでも数年後、その事実を思い知らされた。
貰いものの350mlの缶ビールを好奇心で飲んでみて、激しく後悔した。
けたたましいほどの鼓動に、嫌な汗。
そして、目を開けているのにブラックアウト。
私は思わず笑った。
こんなに飲めないのか私は!?
もちろん胃の中身が空になるまで吐き出して…まだ缶の中には半分以上残っているのに、あの時は相当やばかった。
あれ、急性アルコール中毒って言うんでしょうね。

『遺伝』って『運命』って言葉に置き換えても間違いじゃありませんよね?
いわゆる『下戸遺伝子』の保持者?
アセトアルデヒド脱水素酵素がAA型ってタイプなんでしょうか?

下戸の祖は一人だと言われているようですが。
よくもまぁ絶えずに繁栄してきたものですよね。血筋の絶えたものってのは当然あるはずなので、ちゃんと子孫を残して、しかもモンゴロイドにのみ数パーセントって少なそうに見えて、実は結構いるでしょう。
たった一人の遺伝子異常をきたした人物の子孫だって言われたら、あがいたってどうにもならないじゃないですか。
運命論者じゃないけど、逆らいようが無い。
『アセトアルデヒドを分解する能力がない』ってはっきり書かれると、希望なんか見えませんよ。

でも実は味も嫌い。アルコールの苦みがまったく駄目で、完全に受け付けない。
日本酒もビールもワインもリキュールも、まったく同じ苦味を感じるのでアルコールの苦味と思っているのですが、確信は無いです。だから「お酒が美味しい!」という言葉が理解出来ません。
あ、今これを書いてて気付いたのですが、ひょっとしたらこれは、体が『毒』と認識して退ける一種の防衛反応なのかもしれませんね。
…日本酒の香りは好きなんだけどな。

本当は、別にもう飲めなくたって問題は無いし、素直に諦めればいいものなのですが、厄介な事に憧れっていうのはそう簡単には消えて無くなってはくれないんですよね。
だから私の書く文章には、時々お酒が出てきます。
下戸の書く飲酒の場面は、観察と想像でしかありませんが、酒盛りの楽しそうな光景は、やっぱり羨ましいんです。

でもね、こんな私もほんのちょっとだけ口にする事はあるんですよ。
飲めればいいのにっ! って気分の時はどうせ飲めないので飲まないけど、悪戯心の延長的な気分の時、つまりちょっと楽しい気分の時や、手っ取り早く感度を上げたい時に少し飲んでみたりする。
50ccにも満たない、普段は料理酒としてパスタで活躍する安いワイン。そこに苦味を誤魔化す炭酸を混ぜ、くいっと喉に流し込む。
たったそれだけの量で、一瞬でほろ酔いになれる省エネに優れた体。

…って、そう思っておけば良いんですよね?
表現で誤魔化すしかないんですよ。


そこそこ飲める体質の旦那と、さっぱり飲めない体質の私。
うちの3人の子供達は、一体どっちに似たんだろう?

もし飲めなかったらゴメン。
ここ読む時が来るかどうか分からないけど、先に謝っておくから恨まないでね。
私が一番弱いって事は、たぶん間違いないから。