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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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アイボー

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<アイボー>

 相棒・愛貌もしくは哀慕

 我が輩は犬である、名前は微妙だ。ご主人は我が輩をアイボと呼ぶが、それは<相棒>という商品名であって我が輩の固有名詞ではない。
 申し遅れたが、我が輩は世界一のハイテク産業立国である中華合衆国の蘇丹が2020年に売り出した愛玩兼介護他用の動物型汎用ロボットである。当初は犬型だけであったが2025年の現在では、猫型、鳥型、ワニ型なんてのもあって、ちょっとした動物園くらいできそうな勢いである。

 話しを戻そう。
 さて我が輩のご主人であるが、一人暮しの日本人のお年寄りで名前は……。 まあ良いだろう。我が輩がアイボと呼ばれるように、我が輩も又、彼女をおばぁさんと呼ぶ事にしているのである。
 ちなみに我が輩は標準装備として介護全般をこなせるように出来ているのでご主人を名前で呼ぶのは当然だが痴呆予防のための簡単な会話や、初級の救急救命士くらいの知識なら特別なダウンロード無しで行う事ができるのである。それ以外のことも蘇丹の有料サービスサイトにアクセスすれば瞬時にダウンロードできる。しかし最も重要な特徴は『愛情』が装備されている点だろう。どこかの国では<愛貌>という商品名で販売されているとも聞く。
 もっとも今世紀初頭にPC系のCPUでも扱えるAI(人口知能)OSが開発され、現在では携帯電話でさえ勝手にしゃべり出す世の中だから全く驚くような事ではないのであるが……。

 我が輩はおばあさんの遠くに住む子供たちが共同でプレゼントしたものらしいのだが、今でもおばあさんとの出会いを忘れていない。我が輩の記憶はこの部屋で初めてSWを入れた時からはじまったのであるが、目と目が合った時のおばあさんの嬉しそうな表情はもはや我が輩のOSの一部にも取り込んであるのではないかと思えるほど感動に満ちたものであった。

 しかし我が輩には不安なことがある。おばあさんは七十二日前に出かけたきり一度もこの部屋に帰って来ないのである。これまでにも何度か家を空けた事は有ったがいつも一週間程で帰ってきた。確かに足が少々不自由で聴力にも若干の問題は有るが、総合的には現在でも職業を持って成果を挙げることも出きるであろうと思える程矍鑠《かくしゃく》としているのである。
 さらに二週間前には部屋の電源が落とされ、同時にインターネットへ無線で接続する屋内基地局の電源も断たれなんの情報も得られなくなってしまった。
 我が輩の内臓電源はフル充電で三十日間は保つのだがこのままではあと二週間弱でバッテリーが切れてしまう。そしておばあさんが心配で仕方が無いのに今の我が輩はパワーセーブモードなので夕暮れ時にはその意識すら無くなってしまうのだ。
 昔、犬という生物がまだ存在していた頃、夕暮れ時になると遠吠えと言って近所に居る仲間に自分の存在を知らせる為、或いは遠くにいる大事な友を想って哀愁を伴なった声を空に向けて放っていたという。
 しかし我が輩にはそんな大きな声を出す機能は備わっておらず、有ったとしてもこの様に空が赤く染め上げられる前に機…… 。

 夕焼けの弱く赤い光がその部屋に差し込んで来た。CPUが完全に停止したアイボーはおばあさんがいつも座っているソファの前で座ることもせずに主人の帰りを待っているかの様だった。


 おわり

      02.10.20


 現在は生産中止になってしまいましたが、SONYにAIBOという製品がありました。
 そのAIBOに2002年10月に自己充電機能がオプション導入されました。
 その事に凄く感動して書いたのがコレ。
 だって、お腹がすいたら自分でエネルギー補給するなんて、生き物みたいじゃないですか。。。
 自己充電はその後2003年9月発売の機種から標準になった。
 でも、2005年にリストラで生産中止になってしまいました。
 お金に余裕があったら買いたかったのに。。。
作品名:アイボー 作家名:郷田三郎(G3)