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妻の企み

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『妻の企み』


柿沢直樹は、朝7時に駅近くにあるホテルから飛び出して来た。 
そして今、名古屋駅の新幹線17番ホームに立って、新大阪行きののぞみを待っている。

まだ眠い。
新幹線に乗り込んだら、すぐにホットコーヒーを買い、目を覚まそうと思っている。

佳奈美は、今日は午前年休を取ったからと話していた。 
だから、もう少し眠ってからチェックアウトするようだ。

直樹は昨夜の事を思い出す。
佳奈美は容赦なく直樹の愛を求め、激しかった。

直樹は佳奈美に二週間振りに逢った。 
多分あの貪欲さは、きっとその時間の長さのせいなのだろう。

「一緒に暮らせれば、いいのだが … 仕方がないかなあ」
直樹はぼんやりと考えている。

不思議なものだ。
短いが、佳奈美と熱い交わりをして、こうして朝早くホテルを抜け出して来る。
そして月曜日の朝一の会議に間に合うように、バタバタと京都のオフィスへと戻って行く。
それはまるで愛人との一夜の逢瀬を楽しんだかのようだ。

しかし、それは違った。

佳奈美は直樹の妻なのだ。


作品名:妻の企み 作家名:鮎風 遊