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河上かせいち
河上かせいち
novelistID. 32321
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モントリオールのおじいちゃん

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「メリークリスマス!」
 僕と父さんと母さんとでモントリオールの家を訪ねると、おばあちゃんが玄関で暖かく迎えてくれた。
 モントリオールはアメリカの僕の家よりももっとずっと寒くて、僕は空港を出たときからがちがちと凍えていた。
 ようやく暖かい家に着いて、おばあちゃんとハグを交わすと、僕はそそくさと家に上がった。
「寒かったでしょう?今紅茶でも入れるわね」
 おばあちゃんがキッチンに入ろうとすると、そこからひょこりと顔を出した人がいた。
「まあ、私ったら、紹介が遅くなっちゃったわね」
 おばあちゃんはその子の背中をそっと押して、前に出させた。
「今うちに居候してる、サユキよ」
 そのサユキと呼ばれた日本人は、にこにこと笑いながら、こんにちは、よろしく、とぎこちない英語で言った。
 父さんと母さんもよろしく、と言いながら、握手を交わした。
「AJ、挨拶なさい」
 母さんが僕を促した。子供じゃないんだから、言われなくてもちゃんとするよ。僕は内心思いながら、同じように自己紹介と挨拶をして握手をした。サユキは下手くそな発音で返した。
 サユキはなんだか僕の学校にいる日系の子とは随分印象が違った。
 高校生のくせに小学生みたいな幼い顔をしていて、そのくせ大人みたいに小奇麗な化粧をしている。まっすぐ伸びた前髪をヘアピンで横に留めている。邪魔なら切ればいいのに。服だって、皆みたいにジーンズにパーカーやセーターとかじゃなくて、ひらひらのスカート履いてパステルカラーのカーディガンなんか羽織って、気取った格好している。
 やっぱり日本人はお金持ちなんだな。SonyとかNintendoとかすごいゲーム作っちゃう、テクノロジーの国だもんな。
 僕は長いフライトで疲れていたので、荷物を下ろして、すぐにリビングへと向かった。
 リビングでは、おじいちゃんが車椅子に座ってテレビを見ていた。
「やあ、おじいちゃん」
 おじいちゃんは僕の顔を見るなりにっこりと笑って、もごもごと返事をした。多分、やあAJ、とか言ったんだろう。
 久しぶり、と言いながらおじいちゃんと軽くハグを交わしたら、すぐ僕はバックパックの中からNintendo DSを取り出して、スイッチを入れた。
 おじいちゃんは話し始めると長いのだ。長いだけならまだいいんだけど、何を言っているのかよくわからないから、正直、疲れる。僕はカウチにごろりと寝転がって、ペンで画面をかしゃかしゃこすった。
 そのうちサユキがやってきて、カウチの端っこに座ってテレビを見始めた。僕はちょっと足を曲げて場所を作ってやった。ありがと、とサユキが小さく言った。
 すると、さっきまでおとなしかったおじいちゃんが、突然きこきこと車椅子を移動させて、カウチの横にやってきた。
 そして、サユキに向かって、何やら話をし始めた。
 サユキに話しかけたってわかるはずないのに。僕だってわからないんだから。僕は起き上がって、カウチの反対側の端っこに座った。
 ちらりと横目で見ると、おじいちゃんは何やらジェスチャーしながら、しわしわの顔を更にしわしわにさせて嬉しそうに話をしている。
 サユキはただ、時折うなずいたり、Aha、とうなりながら、話を聞いている。
 おじいちゃんが何の話してるか絶対わかってないくせに。笑顔でごまかして適当にあいまいな返事してるな。日本人ははっきりしないってのは本当なんだな。
 だけど、おじいちゃんはそれに気付いているのかいないのか、にこにこ笑いながら、くしゃくしゃの手をひらひらさせて一生懸命に話している。
 僕はなぜだかいらいらしてきた。
「AJ、あなたの荷物、部屋に持って行ってちょうだい」
 母さんの声が地下室から昇ってきた。僕はすぐにバックパックをつかんで、DSの画面を見ながら移動した。
 おじいちゃんは僕に目もくれず、サユキと話を続けていた。