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てっしゅう
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「神のいたずら」 第七章 事件

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第七章 事件


碧は二学期の中間テストも全問100点を取った。当たり前だと自分では思っているのだが、クラスメイトも担任も驚きは隠せなかった。達也は英語が唯一苦手で碧に及ばないでいた。部活を終えての帰り道上田は成績のことで相談していた。

「碧はまた全問100点だったんだって!・・・すげえなあ。俺なんか100点どころか80点だって取れないから、尊敬するよ」
「肇くん、勉強なんてやればみんな出来るよ。やれない子はやり方が解からないか、やりたくないかのどちらかだよ」碧は上田のことを肇と名前で呼ぶようになっていた。

「そう言っちゃえば簡単に聞こえるけど・・・みんな出来ないぜ。なあ、俺に勉強の仕方教えてくれよ?」
「本気でそう言ってる?」
「当たり前だよ・・・少し成績上げないと肩身狭いからな」
「じゃあ、日曜日に家においでよ。教えてあげるから」
「本当か!じゃあ教科書もって行くから頼むよ・・・お母さんとか嫌がらないか?」
「言っておくから、大丈夫だよ」

次の日曜日に肇は碧の家にやって来た。
「お邪魔します。上田です、初めまして・・・」由紀恵は快く迎えて碧の部屋に案内した。
「来たぜ、碧」
「待ってたよ。座って・・・何か飲む?」
「うん、碧と同じでいいよ」
「そう、じゃあ紅茶入れてくるから、ちょっと待ってて」

下に降りて台所でポットから湯を注いで紅茶を作った。由紀恵は戸棚からカントリーマアムをいくつか取り出して、「持って行きなさい」とくれた。チョコ味が好みだった碧はバニラと入れ替えて二階へ上がって行った。

「お待たせ、これも食べて」
「これうまいんだよな・・・頂き!」
クスッと碧は笑った。勉強が出来る肇より今のキャラの方が好きになれそうだと思った。
夕方まで碧は要領よく教えていた。それもそのはずだ、隼人は教師になる予定だったのだから。

「ママ、肇くんをそこまで送って来るから・・・」
「直ぐに戻りなさいよ。ご飯だからね」
「うん、解かった」

分かれ道まで送って碧は姿が見えなくなるまで手を振っていた。


11月に入って事件は起こった。
学校中が大騒ぎになるほど問題化した。

その日、校門で肇を待っていた碧はなかなか来ないので、どうしたのだろうかとイライラしていた。6時半を過ぎても来なかったので、卓球部の部室まで様子を見に行った。明かりが点いていた。まだいるような様子だった。耳を澄ますと泣き声が聞こえる、それも複数だ。しばらく待ったが泣き声が止まなかったので、思い切って中に入った。

そこの光景を見た碧は唖然とした。正座させられている一年生の男子が泣いていたのだ。碧が入ってくるなり、上級生の男子は、怒鳴りつけた。
「誰だお前は!勝手に入ってきて。出てゆけ!」
「何してるの!みんな泣いているじゃない!どういう事」
碧はうつむいている肇を見た。他の誰よりもひどく顔が腫れ上がっているように見えた。

「お前には関係ない!出てゆかないとつまみ出すぞ。女だって容赦しないからな」
「肇くん!大丈夫・・・酷いこんな顔になって・・・誰よ!叩いたのは、言いなさい」
「お前には関係ないって言っているだろう!」そういって近づいて来た三年生の男子に碧は平手打ちをした。パチン!と大きな音がして、その場にいた全員が固唾を呑んだ。

「何しやがる・・・」碧の身体をつかんで横に投げ倒した。さすがにこれを見た二年生達が、「先輩、辞めて下さい・・・もう辞めにしませんか?これ以上はかわいそうです」そう言って間に入った。
肇の顔をさすりながら、「大丈夫・・・痛かったでしょ・・・もっと私が早くここにくればよかった」そう言って慰めた。碧の言葉を聞いて勇気を出した肇は、立ち上がって、
「今日の事は許せません。一年生全員で抗議します。覚えておいて下さい」
睨みつけた三年生が肇に、「お前解かっているだろうな、先生に言いつけたらどうなるか・・・」
「どうなるって言うのよ!あなたこそ、傷害で少年院行きになるわよ、解かってるの!」
その場に居た他の三年生も碧の言葉にハッとして、ざわめきだした。

「ビビるな!脅しているだけだ・・・そんな事になんかなるものか・・・」
「私が第三者としての証人よ・・・なんなら突き飛ばされて怪我したとでも言おうかしら」

三年生と二年生の全員が土下座をして謝らないければ許さないと碧は言った。親か先生に言われたならそうしたのかも知れなかったが、一年生の碧に言われてそうしようと言う気になれなかったのだろう、「そんな事が出来るか!悪いのは一年生だったから説教していてんだ。それがいけないというなら、統制が取れないだろう!違うか?」碧に逆に食って掛かってきた。

「親でも体罰は許されないのよ。常軌を逸しているわ。今から先生に言ってくるからここで全員待ってなさい」碧は冷静にそう話した。
二年生の中からは、言う事を聞いてここは収めようと言い出したが、三年生は首を横に振った。碧は肇の手を引いて外に出て行こうとした。
「待て!勝手な行動は許さん・・・二年生、そいつらが外に出ないように入り口を閉めろ!」
「先輩!もうダメです・・・俺たち責任負うのはイヤですから、一緒に行って謝ります」
「何言ってるんだ!裏切るのか・・・お前たちも同罪になるんだぞ!」
「構いません・・・もうこれ以上は言う事聞けません。やっぱり悪いことをしたと思っています」

三年生だけを残して全員が職員室に向かっていった。肇は碧の自分に対する思いを強く感じた。その思いが勇気となってはっきりと先輩に反論できたのだ。碧もこの事件以来今までより肇を強く意識するように変わった。

まだ殆どの教師が残っていた職員室の扉が開き碧たちがやってきたことに衝撃が走った。
「清水先生。私は許せません。卓球部の三年生がとった行動は暴力行為の何ものでもありません。指導とか教育とかの常軌を著しく逸しています。厳重な処罰をお願いします」
「詳しく聞かせてくれないか、誰が話す?」
「先生、一年二組の上田です。私が話します」肇がそう言った。一番ひどい顔をしていたので、納得した。

ことの始まりは簡単なことだった。いつもより遅刻してきた肇に対して注意をしたら、返事が悪かったので三年生から居残りを言われて、一年生全員が説教を受けた。女子は先に帰して、男子に日ごろの態度が悪いとくどくど言い始めた時に、肇がもう帰してくださいと反抗したことで、切れたらしい。最初に叩かれて、全員同罪!と言われて次々と叩かれて、そのうちの一人が泣き出したから、何泣いているんだ!とまた叩かれたと言うのだ。

職員室でどうするか検討を始めたが時間が時間だったので、明日の朝校長の意見も聞いて処分を決めるという事になった。自宅へ戻った肇は、当然親から「どうしたの!」と聞かれた。説明をすると、「許せない」と警察に告訴するといい始めた。肇がそれは止めてくれ、と言い返すと、「お前は黙ってろ、お父さんは許さないから・・・傷害として告訴する」はっきりと言われた。

こんな時間にと思ったが肇は碧に電話した。
「俺だ・・・今日はありがとう。父親が警察に告訴するって言うんだよ。どうしよう・・・大変な事になるよ」